「出来事」も「実在性」も、誰しも経験するような身近で日常的にありふれた事柄であり、一見したところその意味は誰にも理解しやすいように思われるが、実際には様々な哲学的問題がそこに潜んでいる。例えば出来事は物とは何が異なるのか、あるいは出来事は存在か非存在かといった問題に一義的な答えを与えることは難しい。実在性についても同様であり、本研究では、これら二つの概念をめぐって、これまでの哲学の歴史における様々な考察を踏まえつつ、そうした考察では不十分だった点を考慮に入れ、フランス現象学の観点から新たな見方を手に入れることを試みた。こうした考察は、これらの概念をめぐる今後の研究の基礎となるものである。
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