研究課題/領域番号 |
20K00079
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小島 宏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90344241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベルギー / ムスリム男性 / 移民2世 / 宗教実践 / 学歴 / コーラン教室通学 / 学校の出自別構成 |
研究実績の概要 |
2020年度の実証研究の実績としては、ベルギーで1994~95年に実施されたモロッコ系・トルコ系男性に対する全国調査、『移動歴と社会移動』(MHSM)調査のミクロ(個票)データにロジットモデルを適用して、ムスリム移民二世男性(35歳未満に限定)における宗教実践への学校関連要因の影響を以下のように明らかにし。は日本社会学会第93回大会で報告した。 2項ロジット分析による分析結果によれば、1)ラマダン中の断食頻度に対して学校関連要因は有意な効果をもたないものの、出自別構成の交差項を投入すると中学校の出自別構成が負の効果、出自別構成の交差項が正の効果をもつが、コーラン教室通学と両者の交差項を投入してもいずれも有意にならない。2)犠牲祭での屠畜経験頻度に対してコーラン教室通学が正の効果をもつものの、出自別構成の交差項を入れても有意な効果はないが、中学の出自別構成とコーラン教室通学の交差項が負の効果をもつ。3)イード期間中の親族訪問頻度に対して学校関連要因は有意な効果をもたないが、出自別構成とコーラン教室通学の交差項を入れたときにのみコーラン教室通学が負の効果をもつ。4)モスク礼拝頻度に対して高卒以上の学歴、小学校の出自別構成、コーラン教室通学が正の効果をもち、出自別構成の交差項を入れると小学校の出自別構成が有意でなくなり、出自別構成とコーラン教室通学の交差項を入れても同様である。5)女性がベールを着用することへの賛意に対して高卒以上の学歴が負の効果をもち、コーラン教室通学が正の効果をもち、出自別構成の交差項を入れても変わらないが、出自別構成とコーラン教室通学の交差項をいれるとコーラン教室通学の主効果も有意でなくなることが示された。結局、高卒以上の学歴が正の効果をもち、コーラン教室通学が負の効果をもつとは限らず、小中学校の出自別構成によってそれらの効果が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は日本でのCOVID-19の感染急拡大で大学により海外出張が禁止されたため、イギリス等での現地調査ができず、また、予備的小規模実地調査を予定していたイギリスでの感染拡大状況がかなりひどかったため、研究協力者が調査を実施できる状況になかった。そのため、西欧諸国のムスリムに関する文献(書籍、インターネット上のもの)の収集・整理と、西欧諸国のムスリム調査のミクロ(個票)データ(インターネットで利用可能なもの)の収集・整理を行った。また、ベルギーのムスリム男性調査のミクロデータの分析を行い、学会報告(オンライン)を行った。しかし、感染拡大による研究活動の制約のため、調査項目がかなり異なる先行調査である、ベルギーのムスリム女性調査のミクロデータの分析は行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も日本でのCOVID-19の感染急拡大が大学により海外出張が禁止されているため、イギリス等での現地調査ができないであろうし、また、予備的小規模実地調査を予定していたイギリスでの感染拡大状況が改善しつつあるとは、研究協力者が調査を実施できる状況にないようである。そのため、引き続き西欧諸国のムスリムに関する文献(書籍、インターネット上のもの)の収集・整理と、西欧諸国のムスリム調査のミクロ(個票)データ(インターネットで利用可能なもの)の収集・整理を行う。その上で、収集した西欧のムスリムや宗教実践に関する文献による文献研究を行う。また、2020年度に行えなかったベルギーのムスリム女性調査のミクロデータの分析を実施するとともに、新規に収集した西欧諸国スリムに関するミクロデータの分析に着手する予定である。さらに、西欧諸国スリムに関するマクロデータも収集整理する。以上の文献研究や実証分析に基づいて学会報告等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は日本でのCOVID-19の感染急拡大で大学により海外出張が禁止されたため、イギリス等での現地調査ができず、内外の各種学会等での発表のための出張も禁止されていたため、出張旅費がまったく使えなかったことにより、次年度使用額の一部が生じた。 また、予備的小規模実地調査を予定していたイギリスでの感染拡大状況がかなりひどく、 研究協力者が調査を実施できる状況になかったため、委託費も使えなかったことにもよる。そのため、科研費を主として書籍やパソコンをはじめとする物品の購入とオンラインの学会参加費等に使うことになった。 2021も日本での感染状況が悪化すると予想されるし、西欧諸国での感染状況も改善しつつあるがいまだに深刻であるので現地調査は難しいし、内外の学会大会等も引き続きオンラインで実施される見込みであるので、出張旅費として次年度使用額を使うことは難しそうである。しかし、内外のオンラインの学会への参加費としては使う可能性がある。また、2020年度に実施できなかったイギリスでの予備的小規模実地調査も実施できる状況にないため、次年度使用額を委託費として使うことも難しいので、書籍をはじめとする物品購入に使うことになると思われる。
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