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2020 年度 実施状況報告書

20世紀後半フランスのフロイト派における構造概念の用法と応用精神分析の展開の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K00095
研究機関金沢大学

研究代表者

佐藤 朋子  金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (70613876)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード精神分析 / フロイト / 転移 / 構造概念 / フランス
研究実績の概要

本研究の目的は、20世紀後半にフランスで活動したフロイト派(以下「仏フロイト派」)の分析家による構造概念の用法とその特徴を明確にし、臨床実践と人文学研究の接続領域としての応用精神分析にその概念がもたらした展開を明らかにすることにある。その目的のもと、2020年度は、「分析実践の場の定義における構造概念の利用」をテーマにし、仏フロイト派との比較にむけた歴史的な文脈の整理(下記(1)(2))と、分析実践の場について仏フロイト派が展開した言説の特徴の明確化(下記(3))にとりくんだ。
(1)フロイトとその弟子(とくにフェレンツィ)、クライン派、自我心理学派によって分析実践の場がどのように論じられてきたかを整理した。転移の問題が1910年代半ば以降、技法上で重要視されるようになり、父親転移、母親転移、逆転移、陰性転移等の概念の練りあげを通じて以降漸進的にさらに分節化されたこと、また、20-30年代にフロイトが理論的平面でも転移を心理学の中心的な問題の一つとし、さらには、一種の外挿法によって、分析実践の外で観察される現象(暗示、集団心理、文化的伝統等)の考察においても問題化したことを確認した。
(2)ラカンの構造概念について、その起源(フランス精神病理学、構造主義言語学、構造人類学)にとくに注目して、精神分析と人文学の諸領域が言説を共有する可能性の観点から評価を行う作業を進めた。
(3)『分析空間の構築』を1970年に発表したS・ヴィデルマンと同時代の分析家の議論の論点と争点を明確にし、また、2000年代までの同書の受容状況を整理した。分析実践の場を「分析空間」として再定義することの正当性を「転移」概念との関連で、その理論的な意義を「経験」概念との関連で確認した。
(1)(2)の成果の一部を書評のなかで発表した。また(3)の成果にもとづく学会発表の準備を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受けて4月中旬に急遽導入が決まったオンライン授業の実施に前期の全期間および後期の一部期間従事したことにともない、授業準備と教材作成を中心に教育活動の負担が当初に立てた予測より著しく増大した。それに対応するために研究時間の大幅な削減が避けられなかった。また、同様に感染症流行の拡大の影響により所属先で海外渡航が禁じられたため、1960年代以降に刊行された研究誌を中心とする文献をフランスで収集するという当初の計画を延期することを余儀なくされた。以上のことが研究課題の遂行にとっての大きな障害となり、進捗が遅れた。javascript:onTransientSave();

今後の研究の推進方策

2020年度の研究成果(とくに分析実践の場に関する仏フロイト派の言説の特徴の明確化)を発表する。
構造概念の用法について、精神分析の他の学派およびフランスの哲学者や人文学研究者と仏フランス派の比較研究を行う。
情動にかんするフロイトおよび仏フロイト派の理論的言説を検討し、整理したうえで、「情動」の観点から分析実践(あるいは「本来の精神分析」)と応用精神分析が相互にもつ意義を再検討する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、新型コロナ感染症流行拡大の影響により、2020年度に計画していたフランスでの研究活動が遂行できなかったこと、また発表活動の遅れにより外国語校閲料を使用しなかったことにある。使用計画としては、外国語校閲料支払いのほか、2021年度以降の海外での研究活動(文献収集、シンポジウム等への参加)、また、渡航困難な状況が継続するあいだは、次善の策として可能な範囲で行う海外の図書館からの文献複写取り寄せや海外古書店からの文献購入、オンラインシンポジウムへの参加をおもに予定している。

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公開日: 2021-12-27  

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