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2022 年度 実施状況報告書

20世紀後半フランスのフロイト派における構造概念の用法と応用精神分析の展開の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K00095
研究機関金沢大学

研究代表者

佐藤 朋子  金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (70613876)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード精神分析 / 応用精神分析 / 転移 / 逆転移 / 経験概念 / S・ヴィデルマン / デリダ
研究実績の概要

本研究の目的は、20世紀後半にフランスで活動したフロイト派(以下、仏フロイト派と表記)の分析家による構造概念の用法とその特徴を明確にし、臨床実践と人文学研究の接続領域としての応用精神分析にその概念がもたらした展開を明らかにすることにある。その目的のもと、2022年度はまずS・ヴィデルマンのテクストについて彼の主著『分析空間の構築』(1970年)を中心に読解と分析を進めた。臨床実践をめぐる彼の言説から、転移および逆転移の力動性と精神分析実践の枠を相互規定的な関係においてとらえる観点を析出し、分析実践の枠のなかで可能になる「経験」の観念がその観点によって規定されていることを明確にし、その明確化を踏まえて、精神分析的な意味における「経験」の可能性の条件という問いの提起にとりくんだ。成果を論文で発表する準備を進めた。また、ヴィデルマンの仕事を契機として仏フロイト派内で展開された議論のうちN・アブラハムの仕事に注目し、精神分析的経験という特殊な問いを一般化する可能性が彼の「双数的統一」(1975年)という観念に示唆されていることについて見当をつけた。
2022年度はまたJ・デリダの講義録の翻訳に従事し、その作業をつうじて得られた知見の一部が上記の目的の達成に資しうることを確認した。とくに『生死』(1975年から1976年にかけて行われた講義の記録)におけるデリダのフロイト読解が、臨床実践にたいする応用精神分析の位置と意義を再規定する可能性を含意していることを仮説として定式化した。同書をめぐるワークショップを企画、運営し、研究成果の一部を発表した(2023年4月開催)。またデリダによる精神分析の応用の具体例を示した小論を執筆した(2024年刊行の書籍に収録予定)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究計画作成時に予定していなかった複数の業務があり、かつそれらに優先的に従事する必要があり、発表を準備する時間を中心に全期間にわたり研究時間を十分に取ることができなかったため。

今後の研究の推進方策

S・ヴィデルマンの仕事にかんする研究成果を論文として発表する。
N・アブラハムが1968-1975年に執筆したテクストを読解し、精神分析実践(狭義におけるとともに応用精神分析を含む広義におけるそれ)にかんする彼の思索の特徴を考察する。
仏フロイト派の理論的平面での活動との関連においてデリダによる精神分析受容の特徴を考察する。

次年度使用額が生じた理由

2022年度内に予定していた学術イベントの開催を2023年4月に延期したため。同様に2022年度内に予定していたフランスでの研究滞在を延期したため。所属する学会の活動にオンラインで参加できる機会が増え、国内移動のために立てていた予算を使用する必要がなくなったため。
2023年度おもにワークショップの開催(2023年4月22日に開催済)と海外での研究活動に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 生死(ジャック・デリダ講義録)(吉松覚、亀井大輔、小川歩人、松田智裕、佐藤朋子訳)2022

    • 著者名/発表者名
      ジャック・デリダ
    • 総ページ数
      400
    • 出版者
      白水社
    • ISBN
      4560098050

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公開日: 2023-12-25  

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