宗教的寛容論は、近代のユダヤ人がヨーロッパ世界へ参入していく際に重要な役割を果たした思想である。本研究では、18世紀ドイツで活躍したユダヤ人の哲学者モーゼス・メンデルスゾーンを具体例として、当時の複雑な社会状況の中で、「寛容」と「不寛容」をめぐって、どのような議論が行なわれたのかを分析した。特に、メンデルスゾーンが、外側のキリスト教社会からの不寛容に対して、どのような対抗言説を展開していたのかを明らかにした。彼は、寛容という当時の流行語がマジョリティ側の同化主義に基づいていることを敏感に察知していた。これは、現代の政治哲学者フォアストの用語では、寛容の許可構想として性格づけられるものである。
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