人文系の学問にとって古典の重要性はあらゆる研究者が指摘するところであるが、古典を現代に賦活する方途に関しては、必ずしも一般的な了解が成り立っているとはいえない。従来の訓詁註釈型の研究は古典の理解にとって不可欠の前提をなすとはいえ、古典を現代に接続するには不十分である。本研究は、美学の古典中の古典である『判断力批判』を人と角例として取り上げて、それを単に2世紀前の歴史的書物として扱うのではなく、現代の美学理論を積極的に構成するものとして捉える方途を探り、古典賦活のためのモデルを構築する試みを行い、その成果を『美学』(東京大学出版会)として公刊した。
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