研究課題
基盤研究(C)
金属工芸の線刻技法は工具(鏨)の種類および施し方から主に「毛彫り」・「蹴り彫り」などに分けられる。しかし、本研究により、作品を詳細に調査・観察するとさらに表現方法は多岐にわたり、また、仏教工芸の種類によっても用いられている技法に偏り(傾向)が認められることが見えてきた。制作技法と表現効果は密接に関係すること、とくに、仏の顕現が求められたと考えられる線刻鏡ではそれにふさわしい技法が用いられていたことを具体的に確認するに至った。
五代十国時代の美術、仏教工芸
仏教においては、「荘厳」(仏や仏の教えを厳かに飾ること)は功徳とされる。そのために仏教にかかわる造形物では、どのような視覚的効果が求められ、材質と技法が選択されたのか、背景にある思想と関連付けながら考察する必要があると考える。本研究では、視覚的効果をねらった線刻技法が用いられたことが想定された線刻鏡の線刻技法と表現の関係を基軸に進め、その結果、中国国内における仏塔へ奉納する行為についての考え方および、東アジアにおける交流史において重要な観点を得たと考えている。