研究課題/領域番号 |
20K00370
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川島 優子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (30440879)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 評点本 / 批評 / 金瓶梅 / 合評選詩 / 凌濛初 |
研究実績の概要 |
明清時代に刊行された通俗小説の多くは、物語の本文が単独で読まれるのではなく、「批評」とセットで読まれることが常であった。小説を読むという行為は、「作品と読者」の二者間ではなく、「作品と批評と読者」という三者間で繰り広げられるものだったのである。本研究は、明清時代に作られた通俗小説の評点本(批評付き版本)を中心に、従来はある意味「おまけ」として等閑視される傾向にあった批評そのものに焦点を合わせ、①「批評と本文との関係について」、②「批評間の関連性について」、③「小説批評の意味について」、明らかにしようと試みるものである。 本年度は本研究の基礎となる調査およびデータベースの作成を行った。具体的には、『金瓶梅』「崇禎本」「第一奇書本」、『水滸伝』各種、「二拍」(『拍案驚奇』『二刻拍案驚奇』)の評点本に対する基礎的な調査を行い、「『金瓶梅』第一奇書本の評点に関するいくつかの問題について」(『表現技術研究』16号、2021年3月、109-120頁)を発表して、評点本を研究する上で注意をすべき諸問題を明らかにした。また、評点は決して通俗小説にだけ付けられるものではなく、当時様々なジャンルの書物の評点本が作られていたことも視野に入れ、「二拍」の編者である凌濛初が編んだ文選の評点本『合評選詩』についても考察を進め、「凌濛初編『合評選詩』考(一)」(『中国中世文学研究』74号、2021年3月、1-23頁)を発表した。さらに、『水滸伝』容与堂本の批評に関して、10月に行われた国際学会(第十六届国際『金瓶梅』学術討論会。オンライン開催)で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は本研究の基礎となる調査およびデータベースの作成を行ったが、新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外の所蔵機関へ赴いて現物を調査することが難しかったため、影印本およびオンラインで画像公開されているテキストを中心に調査を行った。具体的には、『金瓶梅』「崇禎本」「第一奇書本」、『水滸伝』各種、「二拍」(『拍案驚奇』『二刻拍案驚奇』)の評点本に対する基礎的な調査を行い、評点本を研究するに際してのいくつかの問題点を明らかにするとともに、評点符号の意味、圏点と眉批・夾批の関連性など、初歩的な考察を行った。また、「二拍」の編者である凌濛初が編んだ文選の評点本『合評選詩』についても考察を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では新型コロナウィルス感染症の影響により、次年度も引き続きオンラインで画像公開されているテキストを中心に調査を行う予定である。具体的には、課題①「批評と本文との関係について」に取り組み、『金瓶梅』「崇禎本」および「第一奇書本」の批評について、「詞話本」からの本文の改訂と併せて検討を加える。また「二拍」における批評と本文との関連性についても、論文を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外の学会が全てオンライン開催となったことにより、予定していた旅費が未使用となった。今年度も引き続き新型コロナウィルス感染症の状況を鑑みながら旅費の執行を行うが、国内外の移動が難しいようであれば、影印本の購入やオンラインデータの購入に充てる。
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