研究課題/領域番号 |
20K00370
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川島 優子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (30440879)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 評点本 / 明代 / 水滸伝 / 李卓吾 / 凌濛初 / 批評 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に続き『水滸伝』の評点本、なかでも現存する最も古い完本である容与堂刊『李卓吾先生批評忠義水滸伝』(以下、容与堂本とする)に見られる評語について考察を加えた。容与堂本における批評については基礎的な調査を終え、一文字批評の中で最も出現数の多い「画」についてはすでに論文を発表しているが(容与堂刊『李卓吾先生批評忠義水滸伝』の評語に関する考察―「画」を中心として―」『東方学』136号、2018年)、本年度は「画」に次いで多く見られる「妙」を中心に評点全般に考察を進め、「画」とあわせて考えることで、「『李卓吾先生批評忠義水滸伝』における評語「妙」に関する小考」(『明清文学論集 その楽しさ その広がり』東方書店、2024年)を発表した。 凌濛初が編纂した評点本についても引き続き考察を行っている。昨年度までに発表を行った『合評選詩』に代表される評点本において(「凌濛初編『合評選詩』考(一)」〈『中国中世文学研究』74号、2021年〉、「凌濛初編『合評選詩』考(二)」〈『中国中世文学研究』76号、2023年〉)、凌濛初はあくまで「既存の評を集める」形を取っていたが、「二拍」については凌濛初自身のものとされる評点が付されており、そこには明らかに前者と異なる態度が見受けられる。その態度は、容与堂本に代表される李卓吾の批評とも相通じるところがある。次年度はこの点を中心に考察を進める。 また、本年度は国際学術検討会(廣島大學中國文學語學研究室「中古文本の生成と流傳」國際學術研討會曁第十三届周秦漢唐讀書會)を開催し、国内外の研究者との意見交換、学術交流も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も、特に前半期は新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外の所蔵機関へ赴いて現物を調査することが難しかったため、基本的には影印本およびオンラインで公開されている画像データを中心に調査を行った。また、明末には小説に限らず様々なジャンルの評点本が刊行されており、そうした出版文化の中で小説批評も考える必要がある。そのため、昨年度から従来の計画をいささか軌道修正して研究を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、小説(『水滸伝』、李卓吾批評本、「二拍」を中心に)の批評を中心に考察を進める一方で、それらが明末の(小説以外のものも含む)評点本の中にどのように位置づけられるのか、また特に小説(評点本)の読者にどのような需要が存在しており、それに応えるためにどのような工夫がなされたのかについても考察を加える。これらの研究については、次年度中の学会発表を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、今年度も、特に前半期は新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外の所蔵機関へ赴いて現物を調査することが難しかったため、基本的には影印本およびオンラインで公開されている画像データを中心に調査を行った。そのため当初予定していた旅費が執行できなかった。 次年度は、国内外の文献調査、学会参加、必要書籍やデータベースの購入、調査および成果の取りまとめ等の補助者に対する謝金等に経費を使用する予定である。
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