本研究によって、19世紀の北極・北米大陸探検が、ハドソン湾会社などの貿易会社主導のもと、アレグザンダー・マッケンジーやジョン・レイらのスコットランド人探検家によって推し進められたことを確認できた。本研究では、これらの北アメリカの貿易会社の従業員の多くが、スコットランド出身者からなっていたことをふまえ、19世紀の〈海を行くスコットランド人〉の代表としてR. M. バランタインの著作を再評価するとともに、スコットランド人越境者のナショナル・アイデンティティ形成の様子について精査し、北の海を行くスコットランド人の、境界を越えた自己形成のありようを明らかにすることができた。
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