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2021 年度 実施状況報告書

ロバート・グリーンの改心物語とノリッジにおけるピューリタン人脈に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00422
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

井出 新  慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30193460)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード英文学
研究実績の概要

今年度もイギリス・ノリッジへの調査がコロナ猖獗で行えず、日本で入手可能な文献を用いた調査・研究が主になった。
まず、ノリッジのピューリタニズムに関する文献の収集と調査、特に、セント・アンドリューズ教会主任牧師ジョン・モアに関する史料を渉猟し、モアが残したテクストを丹念に調査した。その結果、改心や救済などの神学的事柄に関するモアの考え方が特に「聖書の言葉を聞くこと」に重点を置いていること、そしてそれがグリーンの改心物語に反映されていることがわかった。おそらくそこにセント・アンドリューズ教会のローカルな繋がりを跡づけることができるだろう。
さらにロバート・グリーンの作家としての自己形成とその手法について、グリーンの改心物語自体のナラティヴの特徴を理解しつつ、『グリーンの幻』(Greene’s Vision, 1590)、『グリーンのまだ間に合う』(Greene’s Never Too Late, 1590) 、そして劇作品『ロンドンとイングランドに掲げる鏡』(A Looking Glass for London and England, 1590)が改心物語のナラティヴとどのように関わるかを詳細に分析した。とりわけ『ロンドンとイングランドに掲げる鏡』は、散文作品とはジャンルが違うものの、グリーンが改心ナラティヴを開始した時に制作されたばかりか、当時の反劇場主義運動に対して劇場サイドから反論を試みた劇作品でもあるため、グリーンの道徳的作家としての自己形成を追う重要な作品であることがわかってきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ流行のために二年間ノリッジでの古文書館調査が出来ず、研究構想を裏付けるための根拠となるであろう資料に当たれずにいる。そのため進捗状況は遅れていると言わざるを得ない。

今後の研究の推進方策

これまでの研究の積み重ねにより、ノリッジの宗教・政治的状況、市議会議員に関する情報などに関する研究資料は比較的集めることができただけでなく、近年、様々な印刷物やマニュスクリプトの史料がデジタル化され、Early English Books OnlineやState Papers Onlineなどを通して、コンピューター上で多くの有益な調査を行うことも可能になっている。そういう意味で最低限の調査は行うことができているが、ノリッジのノーフォーク古文書館やケンブリッジ古文書館の史料は、研究者たちが頻繁にアクセスするものではないため、ほとんどがデジタル化されてはおらず、どうしても毎回現地に赴き、実際の史料を調査しなければならない。来年度はなんとか現地調査を行い、構想を裏付けるための資料を調査して、研究をまとめる予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ流行のためイギリスで調査をすることができなかったため次年度使用額が生じた。これについては2022年度に予定しているイギリスでの調査の旅費に充当する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] ’Studie to indent new sects of singularitie’─1590年前後のピューリタン構築に関する一考察2022

    • 著者名/発表者名
      井出 新
    • 雑誌名

      Shakespeare Journal

      巻: 61 ページ: 10-22

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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