研究課題/領域番号 |
20K00452
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
飯野 友幸 上智大学, 文学部, 特別契約教授 (40168084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モダニズム / ポストモダニズム |
研究実績の概要 |
コロナ禍により、当初掲げた海外への調査出張および海外からの講師招聘が困難なため、昨年度も一昨年に引き続き国内の講師による研究発表を企画した。具体的には、名古屋大学の長畑明利先生に「エズラ・パウンドの「表意文字的手法」再考」という演題で研究発表をしていただいた。11月25日(木)の17時からコロキアムという名称のもとZOOMにより開催となり、研究者や大学院生を対象に参加者を募ったところ、幸い15名の参加者があった。 内容としては、モダニズムの代表的な詩人パウンドが20世紀初頭に中国の漢詩から大いなる影響を受け、そこに見られるsuperposition(並列)という技法を、いわゆるイマジズム運動を展開しながら自身の詩に独自に採用することによってモダニズムの詩を推進したが、20世紀半ばにいたって徐々にそれが消えていくことを跡づける、というものであった。ここに、モダニズムがポストモダンへと移行する契機が認められるということで、本研究への刺激と貢献になった。 また、12月にはポストモダン詩の代表格であるジョン・アシュベリーの代表作、「凸面鏡の自画像」(1975)を訳出し、解題とともに(株)左右社より出版することができた。こちらも、アメリカ詩のモダニズム的技法であるdisjunctive(分裂的な)な書法を脱して、散文的な連続性のなかにマニエリスム絵画の影響を書き連ねるなか、意味の不確定性を徹底的に実践することで、ポスとモダン的なという意味で新たな流れを作り出した作品であるため、課題の実績として挙げることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、当初掲げた海外での調査と海外研究者の招聘とが実現できなかったのは残念だが、その代わりに国内の研究者による講演を2年連続で行えた。 また、やはり一昨年に続いて課題に含めた3名のキーとなる詩人のうち、ジョン・アシュベリーの代表作を和訳し、長い批評的解説とともに出版することができて、併せてある程度の進捗を果たすことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、課題のうちに含めた3人の詩人のうち、残りの一人、フランク・オハラについて論文を書き、出版することにより、モダニズムの遺産がポストモダンの詩のなかでどのように変質したかを跡づけるつもりでいる。 また、国内の講演についても、一昨年度のガートルード・スタイン、昨年度のエズラ・パウンドにつづき、今年度はT.S.エリオットという、アメリカのモダニズム詩を代表する詩人についてやはり秋頃に外部講師による講演を実施するつもりである。 研究を遂行する上での課題としては、2年以上におよぶコロナ禍により、当初掲げた海外への調査出張および海外からの講師招聘が相変わらず困難ではあるが、ニューヨークとボストンの隔離と感染の状況を見きわめながら調査のため渡米することも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請では、海外研究調査のための出張、および海外研究者の招聘のために予算の大部分を割り当てたが、コロナ禍のためにそれがほぼ実施不可能となったため、わずかな代金を物品や通信のために充てて終わったため、次年度使用額がかなり残っている。 2022年度は、英米において新型コロナウィルスの感染状況が以前よりも落ち着き、隔離期間も減少もしくは撤廃となってきたので、当初の計画どおりニューヨークやマサチューセッツ州ケンブリッジでのアーカイヴ調査のための出張、あるいは英米の研究者の招聘を実行に移す計画である。
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