• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

モダニズムの遺産と冷戦期アメリカ詩に関する文化史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00452
研究機関上智大学

研究代表者

飯野 友幸  上智大学, 文学部, 教授 (40168084)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードモダニズム / ポストモダニズム / 抒情詩 / 予言者的詩人
研究実績の概要

2022年度もコロナ禍が終息しきらないなか、海外での資料収集および海外研究者招聘は3年連続で見送ることにした。その代わり、まず上智大学アメリカ・カナダ研究所との共催により、モダニズム期のアメリカ詩人についてのコロキアム(講演をとおしてのセミナー)を開催することにした。
3年目となる昨年度は、2022年11月17日に上智大学アメリカ・カナダ研究所において、対面とオンラインにより、20世紀前半にアメリカのみならず欧米および日本にも大きな影響をおよぼした詩人・批評家のT.S.エリオットについて、上智大学文学部・英文学科助教の町本亮大先生に「T. S. エリオットとイギリス観念論」と題する講義をしていただいた。
アメリカのセント・ルイス出身とはいえ、後半生をイギリスで過ごしたエリオットは、19世紀後半のイギリス経験論哲学者F.H.ブラッドリーからいかに影響を受けたか、という内容で、町本氏特有の広汎なリサーチに基づく講演は科研の研究課題にとって大きな刺激となった。なお、聴衆は計17名で、質疑応答も活発におこなわれた。
コロキアムにくわえて、論文も執筆することができた。「"self-styled prophet--John Ashberyの初期詩編における転回」と題し、『英文学と英語学』(上智大学文学部紀要分冊)に発表した。内容的には、上記の講演で語られたエリオットに影響を受けたアメリカ詩人ジョン・アシュベリーが、1960年代後半にロマン派以来の抒情詩を全面的に採用することで、スタイルを一新し、それまでなかったような社会性のある作品を生み出し始め、同時代の激動するアメリカ文化をいかに反映したかを跡づけた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロキアムは3年目ということで、エズラ・パウンド、ガートルード・スタインに続いてやはりアメリカ詩のモダニズムを牽引したT.S.エリオットについての講演を開催することで、連続性と累加性の両方の面での成果を上げることで、20世紀前半のアメリカ詩の流れ整理し、さらに新たな光を当てることができたから。
また、2021年度に詩人ジョン・アシュベリーによる代表作『凸面鏡の自画像』の新訳と解題を左右社より出版したが、1970年代中期に書かれたこの詩集にいたる数年間の詩人の思想的発展を分析するため、「"self-styled prophet--John Ashberyの初期詩編における転回」という論文を出版することができたから。

今後の研究の推進方策

本研究では20世紀中期にモダニズムとポストモダニズムの架け橋をした3人の詩人、エリザベス・ビショップ、ジョン・アシュベリーそしてフランク・オハラを研究することにより、第二次世界大戦後からヴェトナム戦争終息までのおよそ30年間のアメリカ詩を文化的・社会的な側面から照射することを目的としていて、ビショップとアシュベリーについては2020年度から2022年度にかけて論文2本と著書1冊を出版してきた。
最終年度となる4年目の2023年度には、オハラに焦点をあてるが、その際に1990年あたりから盛んになってきた日常性の研究を当てはめて論文を執筆する予定である。
それによって、究極的には3人の詩人がモダニズムの表現基盤の大きな要素でもあったフランス由来のシュルレアリスムからいかに脱して、アメリカにおけるポストモダニズムの詩学の基礎を築いていったかを証明したい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由としては、コロナ禍が終息に向かいつつあったとはいえ、依然予断を許さず、また研究者が高齢者のために慎重を期したことから、海外での資料収集が難しくなったために、図書およびパソコン類の購入に充てることになったため。
使用計画としては、図書とパソコン類の購入に加え、5月にコロナ禍も5類への移行が宣言されることを受け、8月下旬に当初の予定通りアメリカ合衆国のニューヨーク(MOMAのアーカイヴ)とケンブリッジ(ハーヴァード大図書館)での資料収集にあてる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] "self-styled prophet"--John Ashberyの初期詩編における転回2023

    • 著者名/発表者名
      飯野友幸
    • 雑誌名

      『英文学と英語学』

      巻: 59 ページ: 1, 21

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi