研究課題/領域番号 |
20K00465
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中地 義和 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (50188942)
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研究分担者 |
鈴木 雅生 学習院大学, 文学部, 教授 (30431878)
MARIANNE SIMON・O 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70447457)
塚本 昌則 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90242081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ル・クレジオ / 極東アジア文化 |
研究実績の概要 |
作家ル・クレジオの精神形成と創作にとって極東アジアの文化がいかなる影響を及ぼしたかを探ることを目的とする本研究を進めるための基礎作業として、(1)作家が日本、中国、韓国の文学や思想に親しむ媒介となった書物、とくにフランス語や英語への翻訳書を同定する作業、(2)作家のアジアへの滞在歴を時系列に沿って確認する作業を進めているが、このうち(2)について、研究代表者中地は南京大学のツァン・ルー副教授、梨花女子大学(ソウル)のソン・キジュン教授と協力して可能なかぎり情報を集約し、国際的研究誌『ル・クレジオ手帖』第13号(2020)に「クロノロジー」と題して三人の連名で発表した(2020年9月)。 また中地は、「アジアの記号と夢想」と題する同誌同号の特集に、フランス語の論考「ル・クレジオと日本文化」を発表した。この論文はほぼ同時に中国語に翻訳され、北京で刊行されている『跨文化対話』(Dialogue transculturel)誌43号に掲載された。 2013年に刊行されたル・クレジオの小説『隔離の島』の邦訳(原著は1995年刊)の文庫化に伴い、訳文を全面的に見直したうえで新たな訳者あとがきを添えた(6月)。2017年刊の小説『アルマ』の邦訳を訳者解説とともに刊行した(11月)。 研究分担者の鈴木は、文庫版『隔離の島』の書評を書き(雑誌「ちくま」2020年7月号)、共著『フランス文学の楽しみ方――ウェルギリウスからル・クレジオまで』(永井敦子、畠山達、黒岩卓編、ミネルヴァ書房、2021年3月刊)で「ル・クレジオ」の項を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ・ウィルスの世界的感染状況が長引いているため、国際学会や外国でのフィールド・ワークは行なえずにいるが、インターネットを通じて中国、韓国の研究者と情報交換を行うとともに、文献渉猟と、近年ル・クレジオが書いたアジアをテーマとするエッセイ、小説作品の読み込みと翻訳作業を進めており、ほぼ予定どおりに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
ル・クレジオのアジアの思想・文学の理解を媒介した仏訳版、英訳版を特定する作業を具体的に進めたいと考えている(作家の著作にはその手掛かりがほとんどないため、作家自身の協力が得られるかに多分に左右される。コロナ状況が終息すれば、作家をあらためて招聘したい)。 研究代表者は、ソウルを舞台とする小説『ビトナ、ソウルの空の下』(2018年)の翻訳を、研究分担者鈴木は『ル・クレジオ、文学を語る』(原題『中国における15の談論』(2019年)の翻訳を進めている。これらを2022年夏ごろまでに仕上げる予定である。 また、研究分担者シモン=及川、塚本の二名は、より広いコンテクストから20世紀フランス人作家のアジアへの関心、テクストとイメージの関係、シュルレアリスムと日本の関係に取り組んでいる。
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