本研究の成果は、現在世界最大の話者人口を有する北方中国語(Mandarin)の音韻体系の形成史の解明に寄与する。本研究が扱った資料は中国人が諸外国語を学ぶために作った教科書に見られる発音表記であり、教科書という実用的性質から、当時の中国語音の現実を率直に反映していると見られるが、多種の文字を扱わなければならないという難点があり、中国語の音韻の資料としてこれまで十分に研究されているとは言えない。本研究によって、多言語の発音を表記した漢字、及び多言語の文字によって表記された中国語音が整理され、隋唐代の中国語音との対応関係が明らかにされたことによって、中国語学研究の新資料を加えることができた。
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