研究課題/領域番号 |
20K00579
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日韓対照 / 敬語史 / 敬語の変化 / 聞き手敬語 |
研究実績の概要 |
本研究では,対人関係の捉え方の変化により,敬語の使用様相がどのように変化するかを明らかにする。研究初年度である2020年度は,(i)データ分析に先立ち,日本語と韓国語の敬語がこれまでどのように変化してきたか参考文献をレビューし,(ii)韓国のドラマ・映画の文字化作業および分析を始めた。(i)については,日本語は上古から,韓国語は15世紀から,それぞれ現代に至るまでの敬語史を確認し,日韓語ともに身分制度の変化が敬語の体系と使用様相に影響を与えてきたことを把握できた。韓国語では客体敬語を実現する形態が聞き手敬語を実現する形態と結合し,現代における客体敬語は語彙レベルでその命脈を維持している点で日本語と違いを見せる。一方,日韓語ともに現代では聞き手に対する敬語が重視される傾向が見られる点で共通しているが,その意識は日本語より韓国語で顕著に現れている。一例として,韓国語では主体敬語の形態を聞き手を高める時に使う誤用がサービス業を中心に観察されている。(ii)については,1970年代の韓国の映画を分析した結果,同一の聞き手に対して複数のスピーチレベルが混用されるスピーチレベルシフト現象が見られる点では現在と同様であるが,中称や等称が現在より頻繁に使われている点で違いが見られた。1970年代から近年のドラマ・映画を分析することで,時代による敬語の使用様相の違いが確認できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,日韓語の敬語史に関する参考文献のレビューの後,日韓語のドラマ・映画の文字化作業に取り掛かる予定だったが,文字化作業の協力者を十分に確保できなかった。また,もともとは1990年代のデータから収集する計画だったが,さらに古いデータから分析した方が敬語の変化を把握しやすいと考え,1970年代のデータから収集した。現在時点で,韓国語は1970年代の映画の文字化が終わっており,日本語のドラマ・映画の文字化作業はまだ取り掛かることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
ドラマ・映画の文字化作業の協力者を至急募集し,文字化作業に取り掛かってもらう予定である。文字化作業が終わったものからラベリングと分析を行う。その後は,テレビ番組の生放送談話の文字化と分析を行い,尊敬語が基調になっている会話で,どのような時に無尊敬と過剰尊敬が見られるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンラインで開催されたため,旅費がかからなかった。また,日本と韓国のドラマ・映画を文字化してそれを分析する予定だったが,文字化作業の協力者を十分に確保できず,人件費の執行が少なかったため,次年度使用額が生じた。1970年代~1980年代のドラマ・映画の文字化作業が追加されたため,旅費に使う予定だった金額を文字化作業の人件費に充てる予定である。
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