研究課題/領域番号 |
20K00579
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 尊敬形の非規範的な使い方 / テレビショッピングの談話 |
研究実績の概要 |
本研究では、敬語の使用がどのように変化しているかを明らかにする。研究4年目は、韓国語の尊敬形‘-si-’の非規範的な使い方について分析・考察を行った。尊敬形‘-si-’は行為の主体を高める時に用いられる形であるが、近年、飲食店やデパート、相談窓口のようなサービス業界において、聞き手を高める時にも用いられると報告されている。 そこで本研究では、韓国のテレビショッピングの談話をデータとし、尊敬形‘-si-’の使い方を観察した。キャストの発話を分析した結果、先行研究で指摘されてきた通り、非人称主語に対して‘-si-’が用いられる非規範的な使い方が観察された。具体的には、商品(例:鍋から遠赤外線がお出になります)や値段(例:デパートでご購入されると60万ウォン軽くお超えになります)、‘toyta’を伴う時間表現(例:夏になられると)に‘-si-’を使った発話が見られた。また「お客さんからのレビューがたくさんおありだ」と言う際に、有情物に対して使用する‘kyeysita’「いらっしゃる」を用いた例も見られた。これは単に‘-si-’を付加したのではなく、特殊尊敬形を用いた例で、誤用と言うべきものであり、言い間違いとも解釈できる。テレビショッピングにおけるキャストの発話では、顧客となり得る聞き手と少しでも関連がある事柄には、それが鍋や価格、夏といった非人称主語であっても‘-si-’をつけて発話し、聞き手を高めようとする意図が窺えた。一方、用言の種類に注目すると、‘-si-’の非規範的な使い方は主に本用言で見られた。補助用言は‘-si-’の生起位置がほぼ決まっており、‘-a/e cwuta’や‘-a/e pota’などでは非規範的な使い方は全く見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、外部から依頼を受けた仕事(韓国における公開講座のコンテンツ制作)に予想より多くの時間がかかった。また、韓国語の敬語に関しては、長年研究実績があるため、分析や考察が順調に進んでいるが、日本語の方はデータ収集および分析に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
日本映画と日本のショッピング番組の文字化作業をしてくれる協力者を募集し、文字化作業に取り掛かってもらう予定である。文字化作業が終わったものからラベリングと分析を行う。韓国語の方はデータ収集はもちろんデータの分析・考察まで終了したため、日本語のデータ収集および分析・考察が終わり次第、日韓対照に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの文字化作業がまだ終わっていないため、次年度使用額が生じた。2024年度は引き続き、協力者や業者にデータの文字化作業を依頼し、年度を越した研究費は当初の計画通りに人件費に充てる。また、データの分析・考察が終わり次第、研究成果を発表し、論文投稿を行う予定である。年度を越した研究費の一部は、学会参加のための旅費と論文投稿費に充てる。
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