研究課題/領域番号 |
20K00607
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
水野 かほる 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (90262922)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 司法通訳 / 法廷通訳 / 通訳の正確性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、正確で等価な司法通訳を可能にするために、実際に司法通訳(法廷通訳)に関わる参与者が通訳の役割をどのような姿勢・認識で通訳の場に臨みどのような言語行動をとることがより正確な通訳を実現することにつながるかを明らかにし、具体的な言語表現例を含んだ指針を提起することである。令和2年度は、司法通訳人及び通訳人を使う側である弁護士に対する調査から、両者が司法通訳をどのようにみなしており、また実際どのように通訳をしているのか、通訳人が行った通訳をどのように認識しているのか、求められる正確さとはどのようなものであると捉えているか等を調査し分析を行い、その結果を公表した。 結果として、司法通訳人の通訳に対する認識は次のようなものであった。 ①捜査段階での通訳と法廷での通訳の在り方に相違が見られ、法廷では、より発言内容と話者の意図を理解し正確で分かりやすい日本語を使用して通訳すべきだと考えている。 ②通訳の正確性についての認識に理想と現実のギャップが見られた。通訳人は従来からの通訳人を透明人間と見るあり方に影響を受けつつも、述べられたことをそのまま訳出することでは不十分だと感じている人も多い。 ③法廷でのユーザーの話し方に不満を感じている。 一方、弁護人が通訳人に求める通訳方法は、従来から司法通訳に求められてきた、発言された通り省略や編集をほどこさずそのまま訳すというものであり、ここから両者の認識にはいまだ多くの隔たりが存在していると言えるようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
司法通訳人とそのユーザーである弁護士に対する司法通訳についての認識や実態についての調査結果を論文にまとめ公表することができた。しかしながら、当初予定していた司法現場において法曹三者がどのような発話をしていて、またユーザーのどのような発話が訳出するときに分かりやすく正確で等価な通訳の訳出につながるのかに関する調査までは及ばなかった。COVID-19感染拡大の影響もあるが、今後の調査のための準備としての文献資料の収集や確認等を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記述したが、今後は以下の内容について調査研究を進める予定である。①法曹三者は司法通訳の現場でどのような発話をしているかを調べる。②①のどのような発話が、通訳人にとって負担が少なく、訳出された発話が目標言語として自然であり、起点言語から判断して正確で等価な発話であるかを知るための調査研究の準備作業を行う。その上で、可能であれば、通訳人に対する調査を実施し分析作業も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は、COVID-19感染拡大により、予定していた調査ができなかったり、調査協力者に対するインタービュー調査を実施する際もオンラインによって行うなど調査地に実際に行くための旅費の必要がなかったこと等による。今後は、実施できなかった調査に関する調査方法の検討を進め、遅れた分を取り戻したいと考えている。
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備考 |
『国際関係・比較文化研究』第19巻第2号、2021年
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