研究課題/領域番号 |
20K00623
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
福永 由佳 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 研究員 (40311146)
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研究分担者 |
吉田 さち 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (10587786)
鑓水 兼貴 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報発信センター, プロジェクト非常勤研究員 (20415615)
高橋 朋子 近畿大学, 語学教育センター, 准教授 (30635165)
三井 はるみ 國學院大學, 文学部, 教授 (50219672)
高木 千恵 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50454591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語レパートリー / 言語接触 / 言語景観 / 多言語 / 言語変種 |
研究実績の概要 |
近年のグローバル化により、日本国内の多言語状況が意識されている。外国にルーツのある人たち(以下、外国人)の急増とともに、彼らの言語(以下、外国語)を耳にしたり目にする機会が増えているからである。しかし、従来の外国人を対象とした言語調査では、日本語と外国語(母語)の二項対立の枠組みで行われ、方言等の変種の使用は見過ごされてきた。また、多言語使用とは、外国人だけではなく、日本語標準語と方言を使い分ける日本人にも適応可能であると考える。そこで、本研究は、日本に住む人々(日本人と外国人)の「言語レパートリー」(日常生活において使用・接触によって形成される言語的資源の総体)の構造と形成過程を明らかにすることが目的とする。言語レパートリーの形成には、能動的な言語使用だけでなく、使用には至らない、耳にする、目にする、といった受動的な言語接触も重要な役割を果たしている。そのため、本研究では、個人の言語レパートリーを調査する「言語レパートリー調査(外国人調査・日本人調査)」と、社会の言語レパートリーを調査する「言語景観調査」の実施を計画している。研究計画の初年度である2020年度は、主として調査設計にかかわる活動を行った。具体的には、次の2点を重点的に行った。①領域別言語使用、方言使用、多言語使用に関する先行研究を広く収集し検討を行い、目録を作成した。② ①の検討結果をもとに、言語レパートリー調査の予備調査として、大学生対象としたweb調査を実施し、分析を行った。また、これらの活動の遂行にあたっては、外国人の言語使用を専門とする研究者と日本語方言を専門とする研究者がそれぞれの専門領域の知見を持ち寄り活発な意見交換を行うという、専門領域を超えた協働的研究体制が確立されたことも2020年度の研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年度計画では、初年度の2020年度は先行研究収集・目録の作成と予備調査の実施を計画した。その研究計画に従い、初年度の2020年度では、まず領域別言語使用、方言使用、多言語使用に関する先行研究を広く収集し検討を行い、目録を作成した。この先行研究の検討をもとに、大学生対象としたweb調査として実施し分析を行った(回答数308名)。この大学生対象のweb調査は、言語レパートリー調査の予備調査に位置づけられる。この調査により、想定以上に大学生が外国語に接し、使用する機会(場面)があるという知見が得られた。このように今年度は当初の年度計画に沿った研究活動を目標に活動したが、COVID-19の国内感染が急拡大したことにより、緊急事態宣言等が発令され、対面による研究活動やフィールドに赴いて行う研究活動が著しく制限されることとなった。この制限は2020年度の一年にわたり継続されたため、打ち合わせや調査等の研究活動は、非対面でインターネットを活用して実施したが、2020年度計画の一部は達成が困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の目標である、①個人の言語レパートリーを調査する「言語レパートリー調査(外国人調査・日本人調査)」と、②社会の言語レパートリーを調査する「言語景観調査」を実施する方向で研究を推進していく方針である。研究を推進するうえでの最も困難な課題は、日本国内で深刻化するCOVID-19の感染である。感染状況が大きく改善することは見込めないと思われるため、感染の危険性がある対面の調査とフィールドに赴いてデータを収集する調査については、従来通りの調査方法では実現が難しいことが予想される。そのため、実現可能な調査のために必要な情報収集を行い、調査会社やweb調査をより積極的に活用する等、より良いデータを安全に収集することが可能となるような調査方法や調査対象の検討を早急に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にCOVID-19の国内感染が急拡大したことにより、緊急事態宣言等が発令され、対面による研究活動やフィールドに赴いて行う研究活動が著しく制限されることとなった。この制限は2020年度の一年にわたり継続されたため、打ち合わせや調査等の研究活動は、非対面でインターネットを活用して実施したが、2020年度計画の一部は達成が困難となった。そのため、2020年度に実施できなかった調査等を含め、必要かつ実現可能な調査を2021年度に実施するために、2021年前半に調査方法や対象について入念な検討を行う予定である。
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