研究課題/領域番号 |
20K00639
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
松崎 安子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 非常勤研究員 (50581724)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コロケーション / 共起 / 古典 / 生活語 / 評価語 |
研究実績の概要 |
日本語のコロケーション研究の現状としては、日本語教育、日本語表現等の領域からの要請に応え、辞典が発行されたり、ウェブ上でのコロケーション検索が可能となっている。その一方で、古典語では単語が含まれる句や文内での共起関係をも含んだ研究は一部の品詞(例えば陳述の副詞や係助詞などを念頭に置く)を除いては十分に行われてきたとは言い難い。 そこで本研究では中古・中世におけるコロケーションについてコーパスを用いた調査を行い、電子的に整理し、古典語コロケーションの実態ー特に、古今に渡り概念的に普遍性の高い衣食住三分野の体言と親和性のある用言類との共起関係ーを明らかにする。このデータを基に、主として衣食住といった生活語彙について社会、生活様式・様態の実態、変化と関連付け、日本人が言語によっていかに生活を表現してきたのかを歴史、民俗、社会学などの周辺学問を援用しながら考察する。 2020年度は、1.体言を中心語とした用例文収集、2. 『日本古典対照分類語彙表』外作品の語へ分類番号付与、3.統計的指標を用い共起度をはかる、の3点を計画していた。 1.の計画については宮島達夫ほか編(2014)『日本古典対照分類語彙表』の体の類に分類掲載され、「1.3331食生活」「1.3332衣生活」「1.3333住生活」の分類番号を当てられた語を中心語とし、それらの語が含まれる用例文を収集した。その際、主として国立国語研究所が構築した「日本語歴史コーパス(CHJ)」を利用することで作業の効率化を図った。 2.の計画については『日本古典対照分類語彙表』で調査対象となっている17作品以外に『日本語歴史コーパス』に収録されている作品において新たに見られた語について用例を収集するとともに『古典対照分類語彙表』を参考とした分類番号での整理を行った。 3.の計画については、中心語と共起する評価語(形容詞・形容動詞)との共起例を調査し終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度計画としていた「1.体言を中心語とした用例文収集」については、『日本古典対照分類語彙表』の体の類に分類掲載され、「1.3331食生活」「1.3332衣生活」「1.3333住生活」の分類番号を当てられた語を中心語とし、それらの語が含まれる用例文を収集した。その際、『日本古典対照分類語彙表』では対象とされているが、2020年度現在の『日本語歴史コーパス』に収録されていない『平家物語』については、用例の入力収集を全て行えていない。 「2. 『日本古典対照分類語彙表』外作品の語へ分類番号付与」については、『日本古典対照分類語彙表』で調査対象となっていないが、『日本語歴史コーパス』には収録されている作品において新たに見られた語についても『日本古典対照分類語彙表』を参考としながら分類番号のアノテーションを行い、用例を整理した。 「3.統計的指標を用い共起度をはかる」については、中心語と共起する評価語についてその共起度を計測する計画であったが、実例を調査すると、中心語と形容詞・形容動詞との共起例が想定していたよりも少なかった。そのため、共起度やその傾向が把握しにくいと判断し、調査対象作品をいくつか追加することとし、『宇津保物語』、『松浦の宮物語』、『夜の寝覚』、室町時代の草紙について、簡易コーパスの構築に着手した。 以上の内、計画項目1および3についての進捗から、当初計画より遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
全体としては、前年度の作業の継続を行いながら、中心語となる語と共起関係を結ぶ語との間にみられる特徴(語のバリエーションやその史的変遷、それらのジャンル間での異なり)と、特徴に由来する事柄について、他分野の成果も援用し考察を深め究明する。 そのためにもまずは、体言を中心語とした用例文収集について、『平家物語』の用例入力作業を今年度に引き続き行うことや、中古・中世の追加資料の簡易コーパス構築を迅速に進める必要がある。この点について、2020年度については、データ整理などを行ってもらうためのアルバイト依頼の準備が整えられなかったが、次年度には、データ入力や整理等にかかる人員を確保し、計画を軌道に載せたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度については、データ整理などを行ってもらうためのアルバイト依頼の準備が整えられなかったが、次年度には、データ入力や整理等にかかる人員を確保し、計画を遂行するため。
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