研究課題/領域番号 |
20K00653
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研究機関 | 広島文教大学 |
研究代表者 |
橋村 勝明 広島文教大学, 教育学部, 教授 (30330674)
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研究分担者 |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40390257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表記体混淆文 |
研究実績の概要 |
漢字文と漢字片仮名交じり文との表記体混淆文について研究するための基礎資料として、内閣文庫蔵『聖徳太子伝宝物集』の本文データ作成に取り組んだ。本データは、研究開始当初は研究期間の初期に完成の予定であったが、外字入力に予想外に時間が掛かった上、新型コロナウイルス感染拡大により長距離の移動が制限されたために片仮名小書きの確認作業が滞り、進捗が遅延することとなった。しかし2022年度には2回対面による確認作業を実施することができ、丁行付きのテキストデータを完成させることができた。また、原本調査を1回行うことができた。研究成果の公表としては、『中世真名軍記の研究』(汲古書院、2022年11月)を公刊した。本書には既発表論文である「中世真名軍記における助動詞「ケリ」の用字について」(『国文学攷』第250号,2021年6月)を収録している。これは、中世における漢字文(特に真名本)の一特質について言及したもので表記体混淆文における漢字片仮名交じり文の漢字文への影響を考えるための手がかりとなるのではないかと考えている。同書の結章第二節「中世の漢字と訓」において内閣文庫蔵『聖徳太子伝宝物集』にみられる「既」字訓「カクテ」についての考察を書き下ろしとして掲載した。中世の古辞書においては、「既」字は「スデニ」訓と結びついており「カクテ」との関係は指摘できない。漢字片仮名交じり文及び漢字文の用字を検討する上で、中世にあってはこのような漢字と訓との結びつきについても踏まえておかなければならないことを指摘したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染状況が収束に向かう中、対面による確認作業の実現によりテキストデータ作成作業が進んだものの、研究計画全体としては遅れており、1年間研究期間を延期することとした。テキストデータは校正作業と丁行を付すまでは至った。テキストデータ作成作業を通じて「既」字訓の「カクテ」について検討し、中世の漢字と訓との結びつきの特質について指摘をすることができたので一定の成果はあったものと考えている。しかし、原本調査を行った資料についての検討を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
作成したテキストデータに基づき、量的には漢字片仮名交じり文及び漢字文における漢字の使用傾向について、質的には「既」字訓「カクテ」にみられるような中世における特徴的な用字あるいは字訓がみられる表記体の傾向について検討を進める。また、原本調査を通して得ることのできた資料画像を活用し、より多角的に表記体混淆文の用字あるいは訓について検討を進めてゆく。このようにして研究した結果については随時成果を公表し、また最終的な報告書としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により文献調査が実施できず、結果として研究計画全体に遅滞が生じた結果、報告書作成に関わる費用を支出することができなかった。今後は研究計画に従って報告書を作成する予定である。
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