研究課題/領域番号 |
20K00727
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
伊月 知子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (30369805)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 「満洲国」 / 日本語教育 / 植民地教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,「満洲国」の日本語教育について,植民地政策の一翼という負の側面がある一方で,現地教育者による教材や教授法の開発が進み,戦後の新中国における日本語教育の確立に貢献したという正の側面も捉え,その両面から「満洲国」の日本語教育の実態と後代の日本語教育に及ぼした影響を解明する試みである。 具体的には,日本と中国の研究協力者と共同し,「満洲国」から戦後にかけての日本語教育に関する資料の収集と口述記録の採取・掘り起こしを行う。また,史実に対して見解が異なる両国の研究者との学術交流を促進し,本研究の分析や考察に対して,互いに研究者としての客観的な視点から議論を深める。 研究実施計画に沿って,令和2年度は,まず国内外の「満洲国」および新中国の文献や個人の記録資料の入手と整理について,日本と中国の研究協力者の協力を得ながら進めた。中国においては,渡航できなかった研究代表者に代わり,現地の研究協力者が存命の元学習者や戦後の教育関係者が所蔵する資料を収集し,その中から送信可能なものを整理し,研究代表者に提供した。日本においては,関連する古書の購入の他,個人や教育機関から資料を借用あるいはその複写を依頼し,収集に努めた。これら資料収集は,散逸が激しい当時の資料の保存と活用につながるとともに,戦争期の植民地で活動していた教育関係者のその後の足取りを知る手がかりとなった。 また,2年目以降の分析作業を前倒しで進め,考察の一部を論文1編にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した通り,おおむね研究計画通りに進行している。 具体的な達成内容として,1)日本と中国の研究協力者の協力を得て,元学習者や教育関係者の戦後の述懐記録および戦争期の植民地における教育政策に対する研究文献を入手した。提供された資料には,私的な内容も含まれるため,「個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)」ならびに研究代表者所属機関が定める「個人情報管理規則(平成17年4月1日規則第338号)」を遵守した。2)2年目以降の分析作業を今年度に繰り上げて実施し,それを論文にまとめ,国内の関係学会誌に投稿した。3)渡航またはオンラインによる中国の関係学会における発表が可能になった場合に備えて,発表内容に関して,その翻訳を進めるとともに,日本語教育研究者に意見を仰いだ。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は引き続き国内外の資料収集を行い,また,コロナによる渡航禁止が解除されるまで,本研究に不可欠である口述記録や当時の文献等,一次資料に極めて近い資料の収集については,中国の研究者にも協力を要請し,効率的に収集できるよう努める。同時に,研究代表者は資料およびデータの整理と分析を急ぎ,日本と中国の関係分野の研究者にオンラインを使って助言を仰ぎつつ,関係学会での発表に備える。本研究では,分析や考察に対する中国側の研究者からの意見や,中国の関係学会で発表した際の反響について,それらを最終的な考察にも反映すべきであると考え,コロナ禍による影響を最小限に抑えるためにも,オンライン環境を整備して意見交換や学会発表を積極的に進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」が1,453,849円生じたが,これはコロナ禍による海外渡航の禁止のため,研究代表者が行う予定であった中国東北部(大連ほか)での資料収集と関係者への聞き取り等の計画を来年度以降へ延期したこと,またそれに伴う人件費・謝金と必要機材の購入等も繰り越しになったことによる。 (使用計画) 上記の次年度使用額はコロナの状況も踏まえながら,令和3年度における現地調査にあてる予定であるが,今後も海外渡航が難しい場合には,中国の研究協力者に一部を代行してもらう,オンラインでの調査を手配してもらう等,研究の遂行に支障が出ない方法を取ることとする。
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