研究課題/領域番号 |
20K00762
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
谷村 緑 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00434647)
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研究分担者 |
吉田 悦子 三重大学, 人文学部, 教授 (00240276)
山口 征孝 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (20779300)
仲本 康一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80528935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共通語としての英語 / 目的指向型会話コーパス / マルチモーダル / 合意形成 / パラ言語情報 / 談話分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「共通語としての英語」による多人数目的指向型会話コーパスを構築し,言語・非言語情報の分析を通してどのような外国語運用が合意形成に寄与するかを解明することである。具体的には,①実験環境下での収録方法によって会話コーパスを構築し,②母語や習熟度の異なる英語学習者が合意形成過程でどのように課題を成し遂げるのかを,言語・非言語にあらわれる社会的・認知的捉え方の違いから分析する。さらに,③「共通語としての英語」における相互行為のプロセスを明らかにすることで,英語学習者にとって望ましい相互行為の在り方を検討する。 2020年度は,合意形成においてどのようなストラテジーが使用されるかを探るために,他者開始修正(other initiated repair)に焦点を当てた。他者開始修復には会話の受け手が聞き返したり,言い直したりすることによって,理解できなかった個所(トラブル源)を顕在化させる働きがある。本研究では,会話の受け手がトラブル源となっている発話を繰り返すことで会話の修復を行うだけでなく,発話内容を深化させるための説明要求として利用していることが明らかになった。つまりトラブル源の繰り返しが課題達成のための協同的なストラテジーとして使用されていることが示された。 パラ言語情報の分析においては,whから始まる質問―応答連鎖の音調に注目し,パラ言語的特徴(例.Pitch(音の高さ),Intensity(音量)及び沈黙)を文法機能と形式との関係から検討した。結果,発話の重なりやジェスチャーだけでなく,話し手が使用する音調や文法形式(You made for what?)および沈黙が受け手の受け取り方に影響することが示された。また,受け手による音調の繰り返しは,話し手への共感にも,反発にもなりうることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で,日本在住の外国人留学生の数が減少していること,また,対面でのグループ会話の収録が難しいことからデータ収集に影響が出ている。そのためインタビュー等の代替案を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,今までの研究内容を深めるため,オンライン上でのプロジェクト会議や輪読会を催し,研究上の情報交換を定期的に行う予定である。また,国内外の研究会や学会(思考と言語研究会,日本英語学会,社会言語科学会,AILA(Association Internationale de Linguistique Appliquee))で発表し,論文執筆に向けて活動を行う。昨年度から今年度に延期された学会も含まれており,スケジュールが立て込む可能性があるため,計画的に準備を進めるよう努めたい。 2021年度も新型コロナウイルスの感染状況によっては,対面での会話データの収集が困難になる可能性がある。その場合は,対面ではなく,zoomなどのオンライン会議ツールでのデータ収集を検討している。グループ会話ではなくインタビュー方式を取り入れるなど柔軟に対応することも考えている。 また,コミュニケーション研究,ELF(English as a lingua flanca)研究,パラ言語研究等の分野における文献調査や既存のデータの分析などを行い,機動的に研究を推進していく予定である。パラ言語研究やELF研究は比較的新しい研究分野で,発話区間や発話の重なりの決定や検出方法には議論の余地があり,非母語話者の音素認定と記述の研究もまだ十分に進んでいるとは言い難い。これらの研究も推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,対面での多人数会話データ収集が実施できず,参加者への謝金が発生しなかった。また新規データの書き起こし作業に対するアルバイト料が発生しなかった。 共同研究者との対面での会合が開催できず,旅費も発生しなかった。
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