2023年度には、単著論文「戦後国共内戦の帰結と中国共産党の建国・政権構想」(『和歌山大学教育学部紀要-人文科学-』、2024年2月8日、第74集、9~20頁。査読付き)を執筆して発表した。この論文では、戦後の国共内戦の最末期に共産党の支配地域で樹立された権力機関が、土地改革の結果(貧農が経済的・社会的に上昇して中農になった)を前提とし、その革命の成果を固定するものであったことを明らかにしたうえで、中華人民共和国成立後の政権構想(中国人民政治協商会議と共同綱領、人民代表大会制度)にも引き継がれていたことを明らかにした。 2020年度から2023年度までの研究期間全体を通しては、戦後国共内戦期(特に1947年5月以降の内戦後半)に華北地域で実施された土地改革およびその急進化(「行き過ぎ」)が、共産党の支配と社会の秩序にどのような影響を与えたのかを明らかにできた。この研究成果によって1945年から1949年までの共産党の支配確立過程の全容を理解することができ、単著にまとめることができる段階に到達した。この単著については、2023年度に、2024年度の研究成果公開促進費(出版助成)を申請して採択されたため、2024年度中に刊行できる見込みである。この単著が描く歴史像は、戦後国共内戦における共産党の勝利と、中華人民共和国で強度の動員体制が実現した理由について、これまで日本・中国・台湾・アメリカで行われてきた数々の研究の説明とはまったく異なる画期的なものとなっている。
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