植民地期インドにおいては、新たな就業機会の獲得や小規模な蓄財・土地保有などにより、低カーストや農業労働者の中に社会経済的な上昇志向や自立化が生じたことが指摘されてきたが、そうした社会変動に伴う拮抗や確執が最も具体的な形で顕著になったのが、装身品などを筆頭とする消費財の商品群であった。中下層の人々の新しい消費が、既存の社会的規範や文化的表象との間に、どのように反発を喚起したり、折り合いを付けて調整されたりしたかを分析することは、社会変動の本質的な部分を学術的に理解することになる。また、社会変動と消費の接続性に関するこうした分析は、現在のインドに延長的に適用することも可能な現代性も有している。
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