研究課題/領域番号 |
20K01069
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
穐山 洋子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10594236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 青少年福祉 / 子ども観 / イェーニッシェ / 移動型民族 / 福祉的強制措置 / 負の歴史 |
研究実績の概要 |
2020年度は主に以下の二つのテーマついて研究を進めた。 1.19世紀後半から20世紀前半のスイスにおける子ども観と理想の家族像 イェーニッシェ(移動型民族)の子どもの強制保護を手掛かりとして、19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパおよびスイスにおける子ども観と子ども期に関する考え方の変遷の考察、1912年発効のスイス民法典における「理想の家庭像」および「保護されるべき子ども像」の考察と子どもの強制保護を可能にするための公的介入の法的根拠の解明、青少年福祉団体の発展史の考察を行った。これらを踏まえて、イェーニッシェの子どもの強制保護の中心的組織だった「街道の子どもたちのための奉仕活動」の機関紙の分析を通じて、本組織がいかなる子ども観と家族像をもって活動したのかを明らかにした。この研究成果として、「二〇世紀スイスにおけるイェーニッシェの子どもの強制保護ー社会福祉事業と子ども観の観点から」を公表した。 2.20世紀スイスにおける福祉的強制措置の問題とその過去との取り組み 20世紀スイスでは成人も含めて広く福祉的強制措置(強制保護と拘禁)が行われていたが、その中でも特に子どもと青少年が対象になった「親子分離を余儀なくされた子どもたち」と「行政により強制収容・拘禁された青少年および成人」ついて考察した。次に、福祉的強制措置という歴史がスイス社会で取り上げられるようになった経緯、それへの政府の対応、学術的検証と補償を概観し、これらを踏まえてスイス社会におけるこの「負の歴史」の取り組み方とその特徴を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響でスイスでの現地調査を通じて収集予定だった救貧協会や福祉協会の史・資料が入手できていないため、当初の研究計画よりはやや遅れている。しかし、国内から入手できる史・資料や文献を中心に福祉的強制措置の全体像の把握およびその負の過去との取り組みの考察という、子どもの強制保護を現代の問題として考察するうえで不可欠な研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
コロナが収束しスイスでの現地調査が可能になった場合は、救貧協会と福祉協会に関する資料収集を行い、それに基づき「子どもと貧困」の関係について研究を進める。もし、現地調査が不可能な場合は、比較的研究蓄積がある「子どもと教育」に関して二次文献を中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染拡大によりスイスでの現地調査ができなかった。現地調査が可能になり次第、現地調査の費用に充てたい。
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