研究課題/領域番号 |
20K01069
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
穐山 洋子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10594236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スイス / 青少年福祉財団 / 親子分離 / 施設児童 / 奉公児童 / 里子 / C.A. ロースリ |
研究実績の概要 |
2022年度は前年度から引き続きC.A.ロースリに関する研究と本研究に着手以降初めて実現したスイスでの現地調査を行った。 C.A.ロースリについて以下の4点を中心に研究を進めた。ロースリが、①「行政による強制保護・拘禁」に対しどのような批判をしていたのか、②親子分離を余儀なくされた子ども(施設児童、奉公児童、里子)の問題の何に関心を持っていたのか、③そのような子どもの教育がどのようにあるべきかと考えていたのか、④子どもの教育とスイス社会がどのような関係にあるかと考えていたかを考察した。ロースリは生涯にわたって本問題に取り組んでおり、2022度はロースリが施設児童に特に関心を寄せていた戦間期を中心に考察を進めた。これにより戦間期のスイスにおける子ども福祉政策の問題の一端が明らかになる。 スイスでの現地調査では、スイス社会福祉文書館(チューリヒ)にて、スイス最大の青年福祉財団である「青少年のために(PJ)」とその母体組織である「スイス公益協会(SGG)」の議事録、年次報告、活動報告を中心に青少年福祉に関する資料調査を行った。現在、以下の3点を中心に資料の分析を進めている。①PJがどのような子ども観および子どもの教育(家庭と施設)を考えていたのか、②子どもの強制保護は基本的に各自治体の管轄だが、そこにPJがどのように関わっていたのか、または関わっていなかったのか、③子ども福祉を追求する財団が強制的な親子分離をどのように捉えていたのかを、戦間期を中心に資料の分析、考察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始から2年にわたり新型コロナウィルスの感染拡大により、本研究の根幹をなすスイスの文書館での資料調査ができていなかったため、当初の研究計画からは遅れている。そのため入手可能な二次文献やオンライン資料を基に別の観点である、①子どもの強制保護という過去に対するスイス政府および社会の取り組みと②親子分離を余儀なくされた子どもに対するロースリの取り組みからアプローチしてきた。①の研究成果は論文で発表済みである。2022年度にようやくスイスでの現地調査が可能になったため、現地調査で得られた青少年福祉財団等の資料を中心に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度から着手している、ロースリの施設児童、奉公児童、里子に関する主張と提案の考察を通じて明らかになった、ロースリの子ども観や子どもの人権に関する考え方および子どもと社会問題との関連の考察を論文にまとめ、2023年度内に公表する。 青少年福祉財団、スイス公益協会の資料調査で得らえた資料の分析と考察を引き続き進める一方で、スイス連邦文書館とスイス国立図書館に収蔵されている、青少年福祉財団、スイス公益協会および子どもの強制保護に関与していた救貧協会の資料調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染拡大によりスイスでの現地調査が2年間できなかった。2023年度および2024年度の現地調査の費用に充てたい。
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