研究課題/領域番号 |
20K01071
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
森永 貴子 立命館大学, 文学部, 教授 (00466434)
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研究分担者 |
塩谷 哲史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30570197)
塩谷 昌史 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70312684)
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 教授 (70337757)
福元 健之 福岡大学, 人文学部, 講師 (70802255)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 企業家 / ロシア帝国 / 地中海 / 中央アジア / インド / 交易 / 茶 / 奴隷 |
研究実績の概要 |
本科研は近世~近代のユーラシア大陸を主な研究対象とし、各地域におけるエスニシティと流通・交易の関係性について取り上げている。各研究分担者の専門を生かし、中央アジア、ロシア、インド、アフガニスタン、ポーランド、イギリス、地中海において、従来歴史研究対象として取り上げられることが少なかった民族・宗教・物の交流と移動の問題についてそれぞれが調査を行っている。 科研期間である2020年度、2021年度においてはコロナ禍により非対面の研究会が中心であったため、研究の目的・方向性について十分に議論を尽くすことがほぼ困難だった。しかし2021年度後半(12月)からは対面研究会を実施し、各研究分担者間で情報交換を進めることができた。そこで議論したことを基に、2022年度は各分担者にそれぞれの進捗を報告してもらい、全体の方向性を話し合った。研究会の日程と概要は以下の通り。 ①2022年6月研究会。分担者の塩谷(昌史)よりロシア第1回国勢調査に基づくアストラハン県、カザン県の人口統計分析、塩谷(哲史)より18世紀アストラハンのアルメニア商人のデータに関する関する分析について報告を行った。 ②2023年3月研究会。外部から招待した山内氏よりインド・中央アジア間の茶貿易に関する分析、分担者の金澤よりイギリス・モロッコ間の虜囚貿易についての史料分析について報告を行った。 予算の関係から研究会の開催数は多くなかったが、具体的な報告の比較検討により取引の地域性および類型について、また民族と宗教について検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に示した通り研究会自体は2回に留まったが、そこでの議論を深めることで今後の方向性と目的が明白になってきた。 本科研のテーマは一見してグローバル・ヒストリーの比較分析と同系統のものに見えるが、研究代表者、研究分担者との議論において、目指す方向性がそれとは微妙にずれていることが見えてきた。現在のグローバル・ヒストリー/世界史論は、特に中世史・近世史・近代史やアジア史研究の視点から、かつての西洋史中心主義への批判・反批判を行うことで理論の精緻化が進んできている。それらの議論と新たな研究成果は十分評価されるものだが、一方で従来の地誌研究、地域史研究の視点が抜け落ちている部分があるのではという疑問がある。 本科研ではグローバル・ヒストリーの古い類型的視点からは距離を置くと同時に、ゼバスティアン・コンラートの”What is Global Hisotory?”(2016、邦訳『グローバル・ヒストリー』)で提起された類型の一つ、すなわちローカルな歴史から広域的な歴史との関係を捉えなおす手法を研究方法として取り上げることを考えている。特に検討したいのは、地域的特性と一定の民族、仲介者が持つ役割との関係であり、そこには宗教の違いから生じる交渉の有り方などの問題も含まれる。各研究分担者の専門領域の違いが前提としてありつつ、それぞれがローカルな問題をユーラシアの広域的役割との違い・共通性を比較検討することを当面の目的として、相互に情報交換を行っていくことが話し合われた。こうした研究の枠組みと方向性が定まってきたことで、現時点で順調に進展していると言える。 ただし、本科研は2023年3月までであり、2020年度、2021年度の遅れがあるため、あらかじめ2024年3月までは研究期間を延長し、現在の研究を継続して発展させることを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は研究代表者が9月まで在外研究に従事するため、この機会を利用してイギリスのスラブ東欧研究所の研究者、その他の海外研究者とコンタクトすることを計画している。特にポーランドのロシア税関に関する史料の調査、エコノミックスクール・オブ・ロンドンのロシア商人関連文書などを発掘調査し、ロシア・ドイツ・イギリス・ユダヤ人のネットワークなどについて調査する予定である。 また研究分担者との勉強会のため、複数回の研究会開催を予定している。今年度は科研分担者以外の研究者にも報告をお願いし、次年度も引き続き協力者としての参加をお願いしている。次年度新たに研究分担者となることをお願いしたメンバーも、同じく研究会で報告をしてもらう予定になっている。ここでの調査報告は最終的に刊行物として公開することも視野に入れているが、研究期間内で完成することは困難であるため、刊行自体は助成金などを得てからにすることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、2021年度にコロナのため研究会などをリモートで行い、資料調査のための海外出張が事実上できなかったため支出が予想よりも低かった。2022年度は研究会を対面で行うことができたが、その他支出もあまり増加しなかった。 すでに2020年時点で科研を2023年度まで延長して行うことを研究分担者間で話し合っており、そのため残額は次年度に使用する計画である。
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