研究課題/領域番号 |
20K01117
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
上野 晶子 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (50455565)
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研究分担者 |
田村 均 埼玉大学, 教育学部, 名誉教授 (40201628)
日比野 利信 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (90372234)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小倉織 / 諏訪小倉 / 足利小倉 / 備前小倉 / 双糸 |
研究実績の概要 |
(1)第2回全体研究会をオンラインで開催し、一般社団法人豊前小倉織研究会代表大和恵子氏が、北九州市立自然史・歴史博物館が所蔵する小倉織資料を中心に、令和2年度にまとめた小倉織66点についての糸や織りの特徴について報告した。北九州市内に残る多くの資料は、機械紡績糸で織られたものであるが、北九州市小倉南区東谷地域は手紡ぎ糸と機械紡績糸を併用して織られていたものであることに注目した。この報告を受けて、日本における輸入紡績糸の導入や国産紡績糸の普及、各地の小倉織への影響について検討した。 (2)第3回全体研究会を博物館及びオンラインで開催し、栃木県立博物館学芸員篠崎茂雄氏が、栃木の機業地について報告した。小倉織が生産された足利地域は、隣接する桐生市場からの独立、対抗意識から積極的な技術革新がおこっており、足利小倉はそのようななかで取り入れられた織物と位置付けられる一方、大正時代の足利銘仙などの発展とともに衰退し、現在足利小倉として残っている資料はほとんどないという。研究会では、「小倉」の言葉が地域や布の特徴、制作技術を示す言葉として使われているという指摘があり、小倉織の定義とともに「小倉」の意味を追求する必要性を確認した。また、研究会とあわせて博物館が所蔵する資料を熟覧し、幕末に小倉藩士が着していたとされる袴(博物館寄託)は、元々縞柄であったものを再度染め直したのではないか、と指摘があった。 (3)令和2年度より着手していた東谷地域の袴地3点の復元を終了した。成果報告として、東谷郷土資料館(北九州市小倉南区木下)において、復元資料を中心とする企画展を開催した。 (4)海外の木綿織物の小倉織成立への影響を考察するため、長崎歴史文化博物館が所蔵する渡来反物見本帳及び縞帳を調査した。これらの資料のなかには、小倉織に類する双糸はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は東谷地域の小倉織の復元を終了し展覧会を実施するなど、一部については順調に進めることができた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、当初予定していた県外での資料調査がほとんどおこなえなかったため、このような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでおこなってきた全体研究会を継続して実施し、日本の綿織物における小倉織の位置づけ、小倉織の定義などについて検討する。また、県外における資料調査について、長野県、岡山県、島根県にある小倉織の調査をおこなう。この調査データを整理するとともに、その他の小倉織と比較し、各地域の小倉織の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、県外の現地調査がほとんどおこなえなかった。北九州での全体研究会及び、長野、熊本、島根県の調査の旅費として使用する計画である。
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