研究課題
令和5年度は、いまだ続くロシアでのウクライナ問題が収束しないことにより、本研究の柱である在ロシア博物館所蔵のアイヌ・コレクションの調査が、昨年度に続き、実施することができなかった。本年度は、昨年度同様、ロシア調査の代替として、日本国内の博物館所蔵のアイヌ・コレクションに焦点を当てて、コレクションの形成過程を検討した。1)石巻市博物館所蔵のアイヌ・コレクションの調査:当該館では、在野のコレクターである毛利総七郎が1930年代頃を中心に収集した、700点以上にも及ぶアイヌ資料の一大コレクションが収蔵されている。本年度は、昨年度に続き、残りのイクパスイやマキリ等のアイヌ民具を調査した。そして、これまで毛利作成の目録と実物の比較が進んでいなかったことから、その照合を進め、目録にある情報と資料とのマッチングを行った。2)東京国立博物館所蔵のアイヌ・コレクションの調査:1873年のウィーン万博への出品のため開拓使が収集した資料を調査した。関連資料118点中43点の資料を実見し、特に資料にあるラベル等の情報を確認した。今後、ベルリン国立民族学博物館所蔵のウィーン万博出品資料、北海道大学植物園所蔵と市立函館博物館所蔵の開拓使収集資料を合わせて調査することで、初期のアイヌ民具コレクションの形成過程の解明を目指す。3)神宮徴古館所蔵のアイヌ・コレクションの調査:伊勢神宮の博物館として知られている当該館において、収蔵されている南千島出土の続縄文土器の調査を行った。今後の資料化を目指し、完形の土器約50点の写真撮影を実施した。北方域との交流が活発になり始めるこの時代において、特に情報の空白地帯であった南千島資料はアイヌ史の解明に大きく寄与すると考えている。
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北海道考古学
巻: 60 ページ: 87-96