研究課題/領域番号 |
20K01238
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福岡 安都子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80323624)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国家論 / 法学的方法 / 政教関係論 / オランダ / ドイツ / 立憲主義 / 公法史 |
研究実績の概要 |
プロジェクト初年度に勃発したコロナ禍が継続し,今年度もまた,もともと予定していた現地での資料収集が実行できない状況が続いた。そのため,英米独仏と比較して国内的な文献蓄積が少ないオランダ研究プロパーの部分については,引き続き大幅に活動を制約されたが,昨年度に引き続き,国内的蓄積の上で出来ることを積極的に行う方針で,活動を続けた。 第一として,“法学的方法による国家論”としての公法の発展史について,通史的展望の獲得に継続して取り組み,同時に,スピノザのTractatus Politicusを原語で精読し直した。これを通じて,juristische Methodeの確立過程において後に切り落とされたタイプの,しかし,とりもなおさず,人間及び人間集団の行動を必然的に規定する“本性の法則”という,より根源的な意味における“法規範”に着目してconstitutionを叙述しようとするスピノザの試みについて,考察を行った。 また,第二として,従来のオランダを中心とする法史的研究から,我が国の憲法判例解釈のためにどのような知見を得られるかを,具体的な判例研究を通じて考察し直した。具体的には,2021年初めに出された最高裁大法廷判決についての評釈という形で,civil religionとanticlericalismという,政教分離原則の趣旨と射程を考える上で極めて有効と思われる,二つの道具概念の呈示を試みた。特に後者は,直近のCUP論文で採り上げたUlrik HuberのDansmeester van Franequer(1683)を含め,かねてトレースしてきたモチーフであり,近現代アメリカにおける「分離」の法制化を理解する上で,高い重要性を有すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オランダ研究プロパーの部分については,引き続き大きな活動制約の下にあるが,「研究実績の概要」に記載のとおり,現代の判例への示唆を含む,より広い公法史的文脈の研究,また,その文脈の中での基本文献の読み直しを通じて,望外の展望を得ることができたように感じる。
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今後の研究の推進方策 |
特に,「研究実績の概要」で「第一」として記載した事項について,活字としてまとめていくことを目指すほか,引き続き,当該時点の与件の下で,本プロジェクトの趣旨を有効に発揮できる方策の発掘を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で研究活動が自由に遂行できず,特に,海外出張が不可能であったため,対応する剰余を,活動制限の緩和が期待される次年度以降に繰り越したため。
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