研究課題/領域番号 |
20K01277
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中島 徹 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (60366979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 経済的自由 / 営業の自由論争 / ヒューマンライツ / 公序 / 独占 / 公正取引 / デジタル経済 / 自由主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き本研究課題に係る基礎理論研究に従事した。具体的には営業の自由論争での主題である営業の自由は人権か公序かという点をめぐって、第一に、従来それをあえて「人権」と解してきた憲法研究者樋口陽一が、公序であると改説したことの意味と背景を検討し、法律時報誌に「角馬カトブレパの肢ーあるいは自由主義の境域」を公表した。そこでは、歴史研究の方法論からフランス革命の歴史的性格論、それを法学に結び付ける課題意識など、多様な問題があり、解説が持つ意味は多岐にわたるが、本論文を通じて析出した課題は、「人権か公序か」を問う際の「人権」の意義が不明確であったこと、言い換えれば「公序」との対比で「人権」だと解されてきただけで、誰のどのような人権であるかが不問に付されてきたことから、その点を改めて問う必要があるというものであった。そこで、次に、「営業の自由はヒューマンライツか」という視点で原理的検討を行った。営業の自由論争それ自体は、当時の社会状況との関係で問題とされた市場独占を背景としていたために、まずは市場独占との関係における営業の自由の意義を改めて検討し、その成果の一端を土田和博編『デジタル・エコシステムをめぐる法的視座:独占禁止法・競争政策を中心に』(日本評論社)に「憲法と公正取引-デジタル経済下の「独占」を考えるために」として公表した。しかしながら、書物のタイトルからうかがえるように、そこでは経済法的観点からの「独占」に焦点が当てられているために、ヒューマンライツの観点からの検討は限定的なものにとどまらざるを得なかった。そこで、問題の所在をより明確にするために「営業の自由はヒューマンライツか」を早稲田法学会誌99巻3号に公表した。なぜヒューマンライツ論かについては一定程度明らかにしえたが、ここでの検討は課題の析出という点で序論にとどまるため、引き続き検討を加えていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染の社会状況ゆえに断念せざるを得なかった実地調査に代えて、基礎理論研究に従事したが、その点では設定した課題の検討は順調に行ってきたといえると思う。とはいえ、基礎理論研究は先が長く、いまだ序論的検討にとどまっており、引き続き検討を加えていくことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究終了年次との関係で実地調査は困難であるため、引き続き基礎理論研究に従事し、その詠歌をまとめることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦で当初予定の実地調査に支障が生じたために使用額が減少したが、今年度はこれまでより長期にわたる調査研究のための海外渡航を予定しており、予定通りの支出となる予定である。
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