研究実績の概要 |
社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動の一方向性として、その持続可能性の確保が重要となる。その典型である上・下水道、病院、交通等の地方公営企業は、住民の生活の基盤インフラの提供であるからだ。そこで、持続可能性の確保に係る法的判断枠組みあるいは法理論を考察することが重要となる。また、その際、地方公共団体の企業的活動に係る基準の法定化の有無の影響や、その適用の射程が問題となる。日本の地方自治法や地方公営企業法等の制定法規範は、当該企業的活動に対しては、積極的でも消極的でもなく、いわば中立的であるからだ。そこで、外国法制、特にドイツ法を比較参照して、その持続可能性の確保に関係する公法的規制・規範・理論のあり方を考察した。 ドイツでは、各州の地方自治法において、公共目的適合性、地方公共団体の活動能力適合性及び役務提供の需要適合性そして(私人による企業的活動に対する)補完性の3事項が、地方公共団体の経済的活動の許容性を認める上での判断基準となっているが、これらは、基本的に地方公共団体の企業的活動の重大な拡大にも適用されるものの、既存の当該企業的活動体やその活動を制約するものではないされる(Knaff, Oeffentliches Wirtschaftsrecht, 3.Auflage, 2023, Nomos, S.230f.)。そうだとすると、そのような法規範の定めがあることは、既存の企業的活動の持続可能性を根拠付ける又は制約することに影響を与えないかもしれない。しかし、端的には需要適合性の観点は、社会縮小時代においては地方公共団体の既存の企業的活動の持続可能性を否定する方向を肯定するものと理解されえないではない。そのため、社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動に係る公法的規制及びその規範のあり方、さらにその法理論の考察を継続することが必要不可欠である。
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