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2021 年度 実施状況報告書

競争と生産性格差の総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K01323
研究機関北海道大学

研究代表者

中川 晶比兒  北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20378516)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード生産性 / 競争 / 企業間格差 / 中小企業 / 優越的地位の濫用 / 課徴金
研究実績の概要

本年度は、生産性の改善が課題となっている中小企業に焦点を当てて、競争環境によって企業間の生産性の格差を説明する仮説を、理論的に構築した。日本で雇用されている従業者数の約7割を支える中小企業は、大企業と同規模での生産性改善投資を行うのは一般に困難だが、中小企業が大企業とは価格帯の異なる製品の供給を通じて大企業からシェアを奪っている産業もあれば、中小企業の方が大企業よりもプレゼンスが高い産業も存在する。このような産業構造の違いは、商品が同質財か差別化財か、バラエティと品質のどちらが需要者にとって重要かといった形で、競争環境からある程度説明をつけることができる。理論的検討の結果、産業を4種類に分類することで、それぞれの産業に応じて、企業間の生産性格差の生じやすさを予測する検証命題を構築することができた。中小企業に関連して、独占禁止法についても検討を行った。中小企業の中でも研究開発を行う比率が高い製造業者、卸売業者が、強い買い手に不利益な取引を強いられることによって、生産性の改善努力が損なわれる事態は防止されなければならない。独占禁止法による優越的地位の濫用の規制はこのような目的に資する。同規制に課徴金が導入された経緯は中小企業の保護であるため、同規制の制度設計、理論的位置づけ、課徴金規定の解釈の検討を行い、研究会で報告した。事業者を相手方とする優越的地位の濫用に対する規制は、相手方事業者の生産性改善を妨げる行為を規制するものとして、生産性の観点からも重要な規制であることを確認できた。また、課徴金を課すことができる場合を定めた規定(独占禁止法20条の6)の解釈について、中小企業の実情を考慮した形で「購入額」の解釈がなされるべきことを提言することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の作業として最も重要なのは、次年度以降に行うケーススタディに先立って、具体的な検討対象とする産業を特定し、検証仮説を構築することである。本年度は、研究開始当初は必ずしも十分に意識していなかった中小企業の役割に焦点を当てることで、当初想定していたよりも詳細な検証仮説を構築することができた。たとえば同質財市場では集中度の低い産業(中小企業のプレゼンスの高い産業)と集中度の高い産業(中小企業のプレゼンスの低い産業)とで、生産性格差に関する予測は異なってくる。また、差別化財市場においては、中小企業のプレゼンスの低い産業を集中度に応じて分類することを当初想定していたが、理論的にはそのような区分けがうまくいかず、また競争環境から生産性格差を予測できない場合も一部にあることが明らかになった。他方で、中小企業に焦点を当てたことにより、生産性向上に関する施策について、最終年度よりも先取りして検討を進めることができた。中小企業のように個々の労働者の能力の重要性が高まる場合には、個々の労働者の仕事の性格や時間配分、疲労回復といった、企業レベルとは異なるレベルでの対処も検討する必要がある。これらの文献は膨大にあり、現在構想している生産性向上施策を直接にサポートする研究はまだ見つけられていないものの、今後の研究の足がかりを作ることができた。

今後の研究の推進方策

研究は順調に進んでおり、今後も当初の計画通りに推進する予定である。

次年度使用額が生じた理由

海外調査を延期したため、残額が生じた。新型コロナウイルス感染症収束の見通しを確認しつつ、研究期間の後期に実施する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 優越的地位の濫用に対する課徴金算定の考え方2021

    • 著者名/発表者名
      中川晶比兒
    • 学会等名
      北海道大学経済法研究会
  • [図書] 経済法 独占禁止法と競争政策 第9版補訂2022

    • 著者名/発表者名
      岸井大太郎・大槻文俊・中川晶比兒・川島富士雄・稗貫俊文
    • 総ページ数
      497(1―497)
    • 出版者
      有斐閣

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公開日: 2022-12-28  

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