研究最終年度は、これまでの研究を手掛かりに、本研究の集大成として再建型倒産手続における労働契約の処遇の在り方を探求する計画としていたが、それに着手する前に、コロナ禍の影響で2年にわたり実施を見送ってきたイギリスにおける現地調査をようやく敢行することができた。 イギリス調査では、ロンドンの現地の法律事務所において実務に携わられている2名の弁護士(Solicitor)の方および日本の法律事務所のロンドンオフィスにおいて主に日本企業の相談・支援にあたられている2名の弁護士(Solicitor)の方にインタビューを行い、ブレグジット後の倒産実務の変化のほか、コロナ禍への緊急的対応も含めて2020年に制定された「Corporate Insolvency and Governance Act 2020(CIGA)」の効果、これにより新たに創設された3つの措置(The Restructuring Plan(RP)・Moratorium・The Suspension of ipso facto (termination) clauses(倒産解除条項の無効化))により得られた成果等を確認することができた。あわせて現地調査では、最新の資料収集に努め、この調査で得られた知見については紀要等で公表済みである。 これに対してオーストラリアについては現地調査は叶わなかったものの、研究期間を通して法令・判例・論考を広く収集し、オーストラリアにおいてもイギリスと類似した新たな手続を導入していることを確認することできた。 このように英・豪いずれにおいても迅速な会社再建のさらなる推進を目指して新手続を導入したと思われるが、労働契約の処遇に関しては、従前の再建型手続と取扱いにおいて大きな変化を確認することはできなかった。新制度の今後の動向を注視しつつ、既存制度との違いもあわせて引き続き確認していくこととする。
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