研究課題/領域番号 |
20K01456
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 勝 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70306489)
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研究分担者 |
山崎 新 武蔵野大学, 法学部, 講師 (90570044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政治学 / アカウンタビリティ / サーベイ実験 / 消費税 / 税制改革 / 業績評価 / リーダーシップ |
研究実績の概要 |
本研究は、2019年の消費増税時に実施したサーベイ実験データの分析を通して、政府に対する有権者の態度の変化を実証的に明らかにし、fiscal contractという古典的概念が今日においても税とアカウンタビリティとの関係を適切に捉えうるかを批判的に検討することを目的でスタートした。研究代表者は、日本で行なったこの実験の前に、同じく大きな税改革が行われたタイミングに合わせてフィリピンでもサーベイ実験を行なっていた(そしてそのアイディアから本研究の構想が生まれた)のであるが、今年度はこのフィリピンの事例を分析した論文を、査読付の国際ジャーナルに投稿し、公刊することができた。その過程で、本研究にとっても有益なコメントをエディターおよび査読者から受け、日本の事例を分析する上でも重要な理論的および方法論的示唆を得ることができた。また、周知の通り、今年度はコロナ禍という事態を受け、日本を含む多くの国々の政治経済状況が激変し、政府支出や財政構造にも重大な変更が余儀なくされた。こうした特殊な経緯を受けて、研究代表者は、当初の消費増税との関連のみならず、政治におけるアカウンタビリティの問題全般に本研究の外縁を広げて、業績評価や政治のリーダーシップに関する先行研究をレヴューすることにした。その過程で、日本の政治家のリーダーシップおよびアカウンタビリティ、および有権者の評価に関する論文3本と論説リポート1本を公刊した。また、当初の予定では参加を予定していたアメリカ政治学会は、オンラインで開催されることになったが、研究代表者は二日間にわたって大会に参加し、新しい研究動向の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本で行なったサーベイ実験の分析結果は、プレリミナリーな形ではあるが、『中央公論』 134(2) 166 - 174 (2020年1月)ですでに発表した。この分析をさらに精緻に進め、先行研究を十全に把握した上で学樹的論文として刊行していくことが、本研究の当初からの目的であるが、今年度は日本に先立ってフィリピンで行なったサーベイ実験データを分析した論文を査読付き国際ジャーナルで公刊することができ、極めて幸先よいスタートが切れた。また、上記に示したように、コロナ禍という特異な事態に対応して、先行研究のレヴューを広げ、消費増税との関連のみならず、政治におけるアカウンタビリティの問題全般に本研究の外縁を広げて、日本の政治家のリーダーシップおよびアカウンタビリティ、および有権者の評価に関する論文3本と論説リポート1本を公刊し、政治学の立場からこの国難に立ち向かう上での学術的示唆をタイムリーに発信していくことすることができた。以上から、当初計画以上に研究業績を積み重ねることができたと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的および計画通りに、2019年に日本で行なったサーベイ実験から得られたデータを緻密に分析していくこと、そしてそれを学術論文として公刊すべく先行研究をレヴューしていくことを、引き続き行いたい。ただ、今後もしばらくは、コロナ禍が続くことが予想されるので、消費増税との関連のみならず、日本の政治家のリーダーシップおよびアカウンタビリティ、および有権者の評価に関してより広く関心を向け、政治学の立場からこの国難に立ち向かう上での学術的示唆をタイムリーに発信していくことも、引き続き試みたい。当初の計画では、海外で開かれる学会や研究会に参加して、専門的知見を積み重ねることを予定していたが、コロナ禍で余儀なくされるオンラインでの学会・研究会への参加では研究ネットワークづくりに限界があると痛感している。それゆえ、より直接また個別に、中核的な研究者たちへコンタクトを取っていくことも、今後行なっていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、アメリカの学会(アメリカ政治学会)への参加を計画していたものの、コロナ禍の影響で、学会がオンライン開催となり、海外渡航費の支出がゼロとなった。次年度以降に開催される学会に、改めて応募し、それが実際(オンラインでない形で)開催される際に、使用する計画である。
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