本研究は、2019年の消費増税時に実施したサーベイ実験データを分析して、政府に対する有権者の態度の変化を明らかにし、fiscal contractという古典的概念が今日においても税とアカウンタビリティとの関係を適切に捉えうるかを検討することを目的でスタートした。研究代表者は、この実験の前に、同じく大きな税改革が行われたタイミングに合わせてフィリピンでもサーベイ実験を行ない、2021年4月に、このフィリピンの事例を分析した論文を査読付の国際誌で公刊した。その一方で、2020年からのコロナ禍という事態を受け、当初の消費増税との関連のみならず、政治におけるアカウンタビリティの問題全般に本研究の射程を広げて、特にコロナ禍という状況と関連して日本の政治家のリーダーシップおよびアカウンタビリティのあり方、さらにはコロナ状況での有権者の政治評価について研究を進めた。これらのテーマについて論文4本を公刊した。昨年度は、とりわけもともとのテーマであった消費増税関連の研究成果の発表につとめ、名古屋大学法学研究科と関西学院大学総合政策学部にて報告の機会を設けていただいた。また、American Political Science Association の年次総会にも参加して、様々な研究者たちから本研究へのコメントをいただいた。さらに、コロナ禍における日本のワクチン接種の進捗の地域的ばらつきが政権党である自民党及び公明党の国会議員数の多寡に影響されたことを示す論文を査読付の国際誌で公刊できた。最終年度となった2023年度には、コロナ禍が2021年の総選挙において政権与党(自民党及び公明党)の得票にどのような影響を与えたかに関して、分析を進め、近い将来において査読付き国際誌に投稿すべく、現在準備中である。
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