研究課題/領域番号 |
20K01525
|
研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
山根 健至 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (10522188)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フィリピン / ミンダナオ / セキュリティ・ガヴァナンス / 平和構築 / 非国家主体 / 治安部門改革 |
研究実績の概要 |
本研究は、フィリピンにおける平和構築活動、なかでも国家主体(中央政府や国軍など)の能力の向上と非国家主体(武装勢力など)の能力の低下に関わる活動の進展状況および進展に影響を与える要因を把握・検討し、それらがセキュリティ・ガヴァナンスをどのように変容させるのかを明らかにすることを目的とする。 フィリピン南部ミンダナオ島では、少数派のイスラム教徒が独立や自治権拡大を求め1970年代から武力闘争を続けてきた。しかしその中心組織であるモロ・イスラーム解放戦線(MILF)とフィリピン政府は、2010年に発足したアキノ3世政権下で和平交渉を進展させている。申請者はこれまでの研究で、和平進展以降、国家主体であるフィリピン国軍と非国家主体であるMILFの紛争地域での治安維持における協働関係が存在することを明らかにしてきた。これは、国家の治安機構が、統治が十分に及ばない地域で能力不足を補うために、非国家主体と協働するセキュリティ・ガヴァナンスであった。 現在は和平プロセスが進み、自治政府の発足やMILFの武装解除と社会への再統合、および治安機構の改革・再編という平和構築の局面を迎えている。なかでも紛争地域の一部を実効支配してきた非国家主体のMILFの武装解除や国家の治安機構の再編は、国家(中央政府や関連機関)の能力の相対的向上をもたらすため、セキュリティ・ガヴァナンスの変容と帰趨に影響する要因を内包することが仮定される。 2020年3月までにMILF人員の30%を武装解除し、その後、自治地域を管轄する警察組織の設立を経て残りを武装解除する予定であるため、当該年度は、これまでに収集した資料と日本で入手可能な資料を渉猟し、この過程の観察・分析を進めた。この分析は、武装解除の進展状況と生じる課題のあり方に影響する要因を明らかにするために重要な作業である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、研究の主要な部分が現状分析であることから、情報の更新や新情報の入手を目的とした定期的な現地調査による資料・データ収集を実施することを予定している。当該年度はフィリピンのマニラを訪問し、申請者のこれまでの研究活動で交流のある平和問題のシンクタンクや前大統領の和平アドバイザーのなどの協力の下、国軍、国家警察、他の政府機関、大学等の研究機関、市民社会組織などを訪問し、関係者への聞き取り調査や文献収集を実施する予定であった。しかし、コロナ禍の影響でフィリピンへの渡航が実施できず、資料収集と聞き取り調査に大きな遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の推進にはフィリピンでの資料収集と聞き取り調査が不可欠であるため、コロナ禍の状況がどう推移するのかにより、研究の推進方策が変わってくる。渡航が可能となった場合は速やかに渡航を計画・実施し、計画に沿って研究を遂行する。他方で、渡航が不可能な場合は、日本国内で入手可能な資料による分析を進めると同時に、オンラインでの聞き取り調査を模索し、推進することを対応策として検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で海外調査が全く実施できなかったため次年度使用額が生じた。これについては、次年度の海外調査(フィリピン)および国内調査、学会参加等の旅費に充当する予定である。
|