研究課題/領域番号 |
20K01542
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岸本 信 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00610560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 交渉 / 特許技術 / 内生的成長理論 / 協力ゲーム理論 / 経済成長率 / 社会厚生 / 2部料金 |
研究実績の概要 |
本年度は、相互依存する複数の二者間交渉について、その理論に関する先行研究の調査・精読と、特許技術のライセンス料交渉への応用研究を2つ行った。 1つ目の応用研究では、内生的成長理論と協力ゲーム理論を組み合わせ、研究開発競争が行われる中で、研究開発によって創出された特許技術の所有者と潜在的なライセンシーとの間で行われるライセンス料(一括払い料金)の交渉に政府が介入しない場合と介入した場合とで、経済成長率と社会厚生を比較し、政府によるライセンス料交渉への介入の効果を考察した。その結果、研究開発を行う企業がその投資に対する資金を外部から十分に集めることができる状況では、介入によって経済成長率が減少することが分かった。しかし、外部から資金を十分に集められない状況では、介入によって経済成長率が増加し、さらに、特許保護が十分に強いときには、介入によって社会厚生も増加する可能性があることが分かった。 2つ目の応用研究では、潜在的なライセンシー(と特許技術の所有者)が製品市場で数量競争を行う状況において、ライセンス料として2部料金(一括払い料金と従量料金の組合せ)を考え、その2部料金が交渉を通じて決定される場合のライセンシー数と実現する2部料金の特徴を分析した。特許技術の所有者も製品市場で競争する場合、特許技術は全ての潜在的なライセンシーにライセンスされ、従量料金のみでライセンス料が支払われるという結果が得られた。一方で、特許技術の所有者が製品市場で競争しない場合では、特許技術を一部の潜在的なライセンシーにのみライセンスし、一括払い料金のみでライセンス料を受け取るという結果も得られることが分かった。これらの結果は、オークションを用いて2部料金を決定するメカニズムで得られた先行研究の結果と異なるものである。 上記の2つの応用研究は論文としてまとめられ、査読付き国際学術誌への投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、応用研究については、一定の成果が得られたが、本研究課題の中心と考えている相互依存する複数の二者間交渉の一般的なモデル化およびその分析については、先行研究の調査・精読が中心となり、十分に行うことができなかった。また、関連する学会やワークショップなどに参加し、情報収集および研究の方向性について参加者と議論する予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、それらが中止またはオンラインとなり、意図した通りには参加できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、相互依存する複数の二者間交渉の理論に関する先行研究の調査・精読を行うことができたため、次年度以降は、一般的なモデル化およびその分析を進めていく。また、それと共に、本年度行った応用研究の成果を査読付き国際学術誌へ投稿し、掲載を目指す。そして、可能な限り、関連する学会やワークショップに参加することによって、本研究課題に関する最新の研究結果の調査および情報収集を行い、それらによって得られた知見を研究に反映させ、より効率的に研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた学会やワークショップが、新型コロナウイルスの影響により、キャンセルまたはオンラインとなり、旅費の支出がなくなり、また、学会などの参加費も減額もしくは無料となったため、次年度使用額が生じてしまった。 次年度も、当面の間は、学会やワークショップなどがオンラインで開催されることが予想されるため、本年度の未使用額は、次年度に開催される学会やワークショップなどの参加費(および対面で開催される場合は、その旅費)として使用するだけでなく、次年度にオンラインで開催される学会やワークショップなどに参加するために必要な物品の購入費用に充てる予定である。また、査読付き国際学術誌に掲載するために、必要に応じて、研究成果をまとめた論文の英文校正にも使用する予定である。
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