研究課題/領域番号 |
20K01605
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
多和田 眞 名古屋大学, 経済学研究科, 名誉教授 (10137028)
|
研究分担者 |
柳瀬 明彦 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10322992)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 公共インフラ / 貿易政策 / 貿易利益 |
研究実績の概要 |
本年度はこれまでの本研究テーマのサーベイを行ってきた。特に本源的要素を労働のみとする小国のリカード的な貿易モデルに公共中間財を導入した場合の貿易のパターンと貿易利益について、包括的な分析を行った。公共中間財は環境創出型と要素報酬不払型の2つのタイプについて別個に行った。特に、本分析ではマーシャル的な価格調整を導入して、それに従って実現される小国経済の均衡の下で決まる貿易のパターンを確認した。環境創出型の公共中間財の場合には労働賦存量が大きい国ほど公共中間財の生産の弾力性が大きい財に比較優位を持ちその財を輸出することになる。一方要素報酬不払型の場合には貿易のパターンはその逆となることが示された。 さらにどちらのタイプの公共中間財の場合でも、貿易利益は常に得られることが示されている。こうした結果は従来においてより簡単なモデルで導出されているが、本分析では分析を一般化して精緻な議論を行い、財価格とそのもとで達成される生産可能性フロンティア上での資源配分の関係についての分析も付加した。 本分析では政府は私的企業が効率的生産を行いように公共中間財を供給すると仮定してきたが、政府が社会厚生の最大化を目的として公共中間財を供給する場合には、貿易のパターンが与えられた国際価格に対して本論の結果と異なる可能性があるが、こうした分析は今後深めていく必要がある。また、環境創出型の公共中間財の場合にリカードモデルでの貿易パターンがヘクシャー=オリーン型の経済に適用できるような場合に関する考察を始めているので、これをしばらくは継続したいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はこれまでの本研究課題に関する既存研究のサーベイを行うことを目的にしており、その成果も論文としてまとめることができているので、比較的スムーズに進めることができた。サーベイを行っている段階で、従来見過ごされてきた分析もあったため、これらについても取り組んできている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題のためのモデルの作成に取り掛かる。そのために国際公共財を国際貿易モデルに導入することを考える。そして国家間でお互いに供給する国際公共財がどのように他国で利用できるかについて、様々なケースを考えて、貿易のパターンや貿易利益について考察をしていく。基本的には公共財が他国に影響を与える場合、外部効果として他国にスピルオーバーしていく場合や、政府が他国への使用制限を行うことが可能であるとして、政府による戦略的供給を行う場合などが考えられる。はじめに公共財が他国への外部効果としての効果を持つ場合について考察をしていくことにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で予定していた、海外での国際会議が中止になり、国際会議参加のために予定していた旅費が使用できなくなった。海外の優れた研究者との直接交流は本研究にとって重要なため、次年度にできれば、何等かの形で国際的な研究者との交流を行いたいと考えている。
|