本研究は各国が供給する公共インフラの規模が国際貿易上の戦略変数となることに着目して、各国の政府をプレイヤー、戦略変数を公共インフラの供給量、自国の厚生水準を利得とする政府間のゲームを考える。このような国家間のゲームにおいて、国際貿易がどのような状況の時に国際間の分断を生じるのかを分析することである。当初は公共インフラの存在する貿易モデルでの非ゲーム論的な伝統的比較優位論において十分考察されなかった貿易モデルを分析した。この成果はCanadian Journal of Economicsに掲載されている。 その後、本格的にゲーム論を取り入れた分析を比較優位論の代表的なモデルであるリカードのモデルで行い、各国政府が公共インフラを戦略的に用いた場合での各国の貿易パターンと貿易利益の分析を行い、生産技術や消費者選好、経済規模の全てが二国間で同一であっても国家間で異なる財に生産特化して、貿易を行うという非対称均衡が生じるという結果を示し、Foreign Trade Reviewに発表した。 この同じ国の間の非対称均衡の存在は重要なテーマであるため、この1年は、上述のモデルをより一般的にして、全ての面で同一な多数国間での純粋戦略同時ゲームで、非対称的均衡の発生についてより本格的な分析を行い、その論文は現在投稿中である。また、公共インフラの性質によって非対称均衡が生じないことを示し、論文としてFullbright Rev. of Econ. and Policyに発表した。更に、生産コストを低めるような公共インフラとしてのR&D投資を行う企業間での動学ゲームを分析し、Dynamic Games and Applicationsに、そして、これまでの公共インフラと国際貿易の研究のサーベイをInternational Economyにそれぞれ発表した。
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