研究課題/領域番号 |
20K01615
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
大塚 芳宏 東北学院大学, 経済学部, 教授 (20632235)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 景気循環分析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、前年度と同様により広く研究内容を発信できる方法として、東京財団政策研究所Reviewより研究内容の発信を行った。主な研究実績は以下の通りである。 まず、景気を示す指標作成で、内閣府経済社会総合研究所が作成する景気動向指数より簡便かつ容易に作成できる方法を提案している点である。具体的な主成分分析を用いて、総合指数を作成するものである。内閣府が使用する一致系列を用いて、検証した結果、景気動向指数のコンポジット指数とほぼ同じ挙動を再現することを示した。 また、この合成指標と異常値に対応したマルコフ切り替えモデルを用いて、実証分析を行った。景気後退確率の推定結果より、内閣府が公表する景気転換点と概ね整合的であることを示し、合成指標と統計モデルによる景気転換点分析の有用性を示した。 そして、構成系列の景気成分への寄与度分解を行い、2008年の金融危機時と比較し、コロナ禍における景気後退の特徴を示した。具体的には、新型コロナウイルスの影響が出始める2020年3月以降をみると、供給制約を受けた鉱工業生産、出荷、輸出の影響が大きい。さらに、2020年4月の緊急事態宣言発令により、耐久財を購入する機会が制限されたことで、耐久財消費や小売販売の寄与が急激に高まったと考えられる。2018年における景気後退期は、コロナ禍前は5分の1程度の落ち込みであり、残りはコロナショックによってもたらされたことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、景気の分布を表現する統計モデルについて拡張および検証しているからである。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、景気の後退期と拡張期の分布を捉える新たなモデルを開発し、それらの実証分析結果を国際コンファレンスで報告予定である。また、コロナショックに伴う消費者などの景気実感の落ち込みを時空間計量モデルで測る研究についても着手をしている。この研究では、近年、python等で実装されているハミルトニアンモンテカルロ法におけるNUTS法よりも効率的な推定方法を開発し、成果をまとめている段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、コロナ禍により旅費経費がなくなったことが主因である。そして、次年度については関連図書などに充当する計画である。
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