今年度は、以下2点の研究を行った。 まず、景気動向を捉える統計モデルの応用である。2022年にThe 6th Eastern Asia Chapter of the International Society for Bayesian Analysisで発表した非対称な確率分布を導入したモデルを最新のデータに当てはめ、実証分析を行った。具体的には、マルコフ切替モデルの誤差項に対して、非対称かつ裾が厚いという性質をもつ一般化双曲型非対称分布を仮定したモデルを用いた。これにより、景気の後退期と拡張期における分布の歪みをそれぞれ推定し、景気の転換点も合わせて推定した。この研究は、景気循環学会の中原記念奨励賞で表彰され、同学会の学術雑誌である「景気とサイクル」に掲載されている。 もう1つは、トレンド・サイクル分析モデルの実証研究である。こちらについては、消費者物価指数などインフレに関する経済データを用いて、先行研究よりも高速に計算できるアルゴリズムの開発に着手した。同研究については、現在、論文にまとめている段階である。
|