研究課題/領域番号 |
20K01627
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
都留 康 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (00155441)
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研究分担者 |
後藤 潤 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (30732432)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済的インセンティブ / 社会的評判 / 社会的分断 / 差別 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,社会的評判と金銭的インセンティブとが人間の協力的行動に対してどのような相互作用を持つのかを明らかにすることである.とりわけ,①社会的評判制度の形成は協力的行動を促進するのか,②個々人の社会的評判の水準に対して金銭的インセンティブが付与された場合,協力的行動がクラウドアウトされるのか,の2つに焦点を当てる.この目的ために,2018年6月に「社会的評判制度」を導入し,9月にその評価に金銭的インセンティブを付与したA社のQ&Aサイトデータを分析することとした. 2021年度には,先行研究を精査し,データ整理を進め,国立情報学研究所を通じて「Yahoo!知恵袋データ」も入手して,われわれの調査対象であるA社データとの比較を行った. 先行研究の精査から,リサーチクエスチョンを「社会的評判制度と金銭的インセンティブの導入が,オンラインコミュニティ上でのイデオロギー的分断や様々な差別を助長するのか否か」に特定する方がいいとの結論に至った.暫定的ではあるが,「社会的評判制度」の導入は分断や差別を緩和する方向に作用するのに対して,「金銭的インセンティブ」の導入は分断や差別を助長するとの結論を得た.また,自然実験を伴わない「Yahoo!知恵袋データ」をベンチマークとして使用して,「Yahoo!知恵袋データ」では,A社データで観察されたようなイデオロギー的分断や差別が同時期に変化していないことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の精査の結果,また現在,先進諸国のオンラインコミュニティ上で問題になっているイデオロギー的分断や差別の問題に焦点を当てることに方向を微調整した.暫定的計量分析の結果を得ている.また,自然実験のない「Yahoo!知恵袋データ」も入手して,自然実験を伴うA社データとの比較も行った.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,データ分析をさらに進め,論文を執筆し,この論文を発表するのに最適と思われる海外の英文ジャーナルに投稿予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,研究打ち合わせのため,都留が神戸大学を訪問する機会,ならびに後藤を一橋大学に招聘する機会が減少した.また,海外渡航が制限されていたため,海外の主要大学などでのセミナーや類似テーマを研究している研究者との交通機会も制限されたこと.これらの事情により次年度使用額が生じた.2022年度は,データの計量分析を進め,英語論文としてとりまとめ,海外出張してセミナー報告や意見交換を実施する予定である.
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