研究課題/領域番号 |
20K01629
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
濱田 弘潤 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70323954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工知能(AI) / 経済成長 / オートメーション / シンギュラリティ / 生産関数 / インセンティブ |
研究実績の概要 |
本研究は,人工知能(AI)の普及が国際貿易に与える影響について,主に経済理論的観点から解明することを目的とする.2020年度は,AIがマクロの経済成長に与える動学的影響に関する先行研究を調査し,サーベイ論文を学術紀要に執筆したが,研究実績として論文が出版されるのは2021年度になる.この論文では,AIが経済成長に与える影響について,新古典派マクロ動学の経済成長理論や内生成長理論と同様のシンプルな枠組みで統一的に分析できる可能性について,最新の先行研究に基づき概説を行った.特に,AIのモデル化は,1. 財の生産関数に関するオートメーションの影響,2. 知的活動の生産関数のオートメーションという形で分析できる点,また「シンギュラリティ」を理論モデルではどのように捉えることができるのかについて,いくつかの可能性のあるストーリーを紹介し,概説を行った. また,応用ミクロ経済学の観点から,AIによる情報伝達や意思決定の変化を考察するための前段階として,寡占競争下での経営委任(managerial delegation)について研究を実施し,査読付英文雑誌に2本掲載した.企業間で市場競争が行われる産業組織論的文脈で,企業内の戦略的経営委託が,企業利潤に与える影響について考察を行った.仮に企業所有者が経営者に適切なインセンティブを与えることができるなら,どのようなインセンティブを与えるべきかについて分析を行った.しかしながら,組織のマネジメントの文脈でのAIの明示的な導入による分析や,AI導入が熟練・非熟練労働者の技能形成に与える影響については,未だ十分な研究成果を実現できていないので,今年度以降の研究の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は,十分な研究実績を挙げることができたとは言い難い.新型コロナ禍も影響し,国内外での学会発表・参加や研究会参加・報告等は全くできなかった.主要な研究成果を論文に執筆することも,2021年度に持ち越すことなっている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,国内外での学会発表・参加や研究会参加・報告を積極的に行い,当該テーマについての最新の知見を吸収し,研究成果を論文にまとめる予定である.とはいえ実際には,新型コロナ禍が続く今年度も,研究交流を十分な形で行うのは困難であることが予想される.ニューノーマルに対応し,学会・研究会報告よりも論文執筆に研究活動のプライオリティを置いて,またオンライン研究打合せを利用し,学会・研究会参加の有無に左右されない研究推進体制を構築する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍により,2020年度に予定していた,研究打合せや研究会への参加・報告,国内外の学会での参加・報告が全て,キャンセルもしくはオンラインの形式で行われたため,あらかじめ支出が必要と見込んでいた国内外の研究旅費にかなりの額の執行残が生じたのが主な理由である.2021年度も当初見込んでいた研究打合せや研究会への参加・報告,国内外の学会での参加・報告が予定通りに実施できるかは分からないが,新型コロナ感染対策が進むに従い,年度後半には,当初予定していた計画通りに研究出張旅費に使用することを予定している.
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