3年目となる前年は、ノンパラメトリックPSM-DIDを用いた計量分析により、M&AからR&D投資と特許申請・取得への因果関係を探求した。その結果、非国有企業では、R&D投資を最も盛んにおこなうグループがM&A後にもさらにR&D投資を活発化させ、かつ特許申請・取得を活発化させるが、国有企業ではM&AがR&D投資を活発化させない一方、国有企業はM&A後に特許申請・取得のみを盛んにおこなうことが厳密な因果関係として確認された。また、非国有企業においてはM&Aが買収企業自身によるイノベーションへのインプットを盛んにおこなわせるように動機づけるしそれがM&Aをおこなう目的であるのに対し、国有企業ではM&Aは買収先企業に蓄積された技術を自社に導入しイノベーションアウトプットを迅速にする目的でおこなわれ実際にそれに成功していることが示唆された。 この3年目の成果の上で、最終年となる4年目は、M&Aがその後のイノベーション促進に与えた効果を、M&A自体の量的大きさ自体が与えるインパクトとして計測する分析を行った。そのために先のM&Aに踏み出す企業の選別メカニズムの計量分析で推定されたM&A 買収者確率を用いたreweighted regressionを活用し、M&Aの量的大きさがその後のR&D投資と特許申請・取得といったアウトカムにどのくらい大きさの経済的インパクトを与えたかについての厳密な因果関係を確保した計量分析を行った。その結果、非国有企業でのM&AのR&D投資活性化効果、国有企業におけるM&AがR&D投資の特許申請・取得促進効果がM&Aの量的大きさに経済的インパクト上強く左右されることが分かった。 最後に研究の取りまとめを行われた。
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