研究課題/領域番号 |
20K01698
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
鈴木 智也 関西大学, 経済学部, 教授 (40411285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難民 / 空間計量経済学 / ベーシックインカム / 世代重複モデル |
研究実績の概要 |
現在、2022年度に Migration and Development というジャーナルに掲載された自分の論文の続きをやっている途中である。その論文では、難民申請者の母国と申請先の国との文化的相違(あるいは類似)が難民申請者のフローに対して有意であるとの結果を得た。また、その論文では、文化的相違や類似を測るデータとして、6つの側面から各国の文化を指数化したホフステッド指数を利用した。 2022年度にとりかかったことは、その指数を用いた国同士の文化的距離の数値化である。文化的距離を数値化したうえで、空間計量経済学の手法を用いて、難民申請者と移民のフローのモデルを各々推定し、難民申請者と移民に違いがあるのかを調べるのが目的である。 文化的距離の数値化で、手元のデータは上記の論文で使用したホフステッド指数だけである。しかしながら、移民に関する先行研究では、ホフステッド指数以外のデータを用いたものがある。そのようなデータは必ずしも公開されておらず、現在、著者らに連絡を試みているところである。 また、文化的距離の数値化以外に、スピンオフ的に研究したことは社会保障の改革についてのシミュレーションである。難民や移民の先行研究では、社会保障の充実した国に人が集まるという結果がしばしば得られている。移民ならば少々高齢でも出身国で払った年金を利用できるだろうが、難民の場合、出身国の年金を利用するわけにもいかず、受入国で年金を払う期間が短いと引退後に年金支給を受けられなくなってしまう。そこで、仮に年齢に関係なく政府から移転所得を受けられるベーシックインカムを賦課方式の年金制度に代えて国が導入した場合、資産の格差や厚生がどうなるのかを計算した。こちらをまとめた論文は既に査読済みで、Journal of the Asia Pacific Economy に掲載が決まり、最終の校正中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、国どうしの文化的距離を測るデータを先行研究の著者に請求しているが、返事が来ない。それが遅れの理由である。返事を待っている間に、上記のように社会保障改革に関する研究をスピンオフ的に行ったが、当初に予定していたメインとなるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
上述の著者に要求中のデータは一般公開されていないものの、彼らの論文で "The data for the cultural distance measures we employ in this analysis is available upon request from the authors." とあるので、もう何回か連絡を試みる。 そのうえで返信がないようであれば、手元のホフステッド指数のみで国家間の文化的距離を数値化して、先に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前に参加を考えていた学会が延期や中止になったままで、参加できなかったことが大きい。ただ、円安や燃料費の高騰で、海外渡航費がコロナ禍以前よりもだいぶ高くなってしまっているので、生じた次年度使用額は海外渡航に十分な額ではなくなっている。 一方、前述のように、本来のメインテーマだけでなく、スピンオフ的に発生した関連テーマの研究も併せて行っているため、論文の英文校閲費用が当初予定よりもかかることになりそうである。したがって、この次年度使用額は英文校閲に充当する計画である。
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