研究実績の概要 |
最終年度は、論文Miyake, Hizen & Saijo (2023)をSustainability誌に掲載するとともに、関連する学会報告を2件おこなった。この実験では、将来世代の代理票を現世代の一部に付与するという持続可能性を意図した投票の文脈のもとで、一般の方々を実験参加者として、学生を実験参加者としたときと整合的な投票結果が得られている。代理票を導入しても将来世代を利する選択肢の得票シェアは増加しなかったため、何か工夫を施すか、別の手段を検討するかが必要であることが示唆された。また、論文Hizen & Kurosaka (2021)を学術誌に投稿した。
研究期間全体を通じては、4本の論文を学術誌に掲載した。いずれも投票の実験室実験であり、抽象的な文脈のもとで投票という言葉も排除したものが1本、抽象的な文脈のもとで投票であることを明示したものが1本、持続可能性の文脈のもとで投票であることを明示したものが2本である。今回の実験の範囲では、文脈による結果の明確な違いは見出されなかった。経済学の流儀にならった実験室実験では、具体的な文脈を与えてもなお意思決定環境は現実を単純化したものであること、金銭的インセンティブが付与されていることにより、結果が文脈に影響されにくいと思われる。そこで、買い物における商品選択と比較して投票における候補者選択を特徴づけるものを直接的に尋ねる質問調査をしたところ、社会として何かを選ぶ(他人や自分の生活全般に影響する)こと、自分の選択から生じる便益と費用がはっきりしていないことを挙げる回答が多かった。ただし、そのような投票の特徴を強調したシナリオ(近年の投票率の低下に関して)を読んでもらい投票の義務感を問うても、統計学的に有意な影響はなかった。
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