研究課題/領域番号 |
20K01805
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
正木 響 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (30315527)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ギネ / 郵便為替 / 財政 / 貨幣 / セネガル / 植民地 / フランス / グローバル経済史 |
研究実績の概要 |
今年度も海外渡航は不可能であったが、既に集めていた史料を用いて、3本の英語論文を出版するとともに、オンラインで2回の英語口頭発表を行った。うち特に重要なものについては、日本語でその解説を行う短文を商業誌に発表した。これ以外にも、査読誌に投稿しているものが2本、出版社の企画ですすんでいる書籍分担執筆論文1本、自身が企画している論文集の論文1本を脱稿した。以下に、2021年度に発表できた論文3本の成果についてまとめる。一つ目は、ギネというインド産藍染綿布を西アフリカで貨幣として利用するまでのグローバル交易の提示である。特に19世紀末には、それまでのセネガル経由のルートに加えて、北アフリカやギニア湾を経由するギネ搬送ルートが誕生したこと、フランスの交易政策をめぐるステークホルダー間の対立もしくは協力が、こうしたアウトカムを創出したという歴史を、植民地主義および帝国主義が創出するグローバリゼーションというフレームワークで論じた。二つ目は、Karin Pallaver(ボローニャ―大学)が編集する書籍に所収された論文で、セネガルに運ばれたギネが、他の商品貨幣やセネガル銀行が発行する紙幣と共存していたこと、また、アフリカの人々が商品貨幣を、入植者および植民地政府が近代貨幣を用いるといった貨幣空間の分断があったわけではないことを提示した。三つ目は、フランスの社会科学高等研究院(EHESS)が発行する学術誌に所収された論文で、旧仏領西アフリカでのmandat(郵便為替)の発展過程と、アフリカからフランスへの送金では、植民地財政と関係の深い郵便局を経由した送金が、民間セクターである銀行経由のそれよりも多かったこと、そのことが、CFAフランシステムの根幹をなすcompte d'operationのフランス国庫開設につながったことを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3本の英語論文を出版、オンラインで2回の英語口頭発表、加えて4本の論文を脱稿した。
|
今後の研究の推進方策 |
フランスおよび西アフリカに渡航し、抜けている資史料を補完するとともに、World Economic History Congress2022にて、発表を行う。加えて、ギネの西アフリカ域内での交易についての論文を仕上げ、書籍出版に向けた準備をすすめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外渡航が不可能であったため。来年度は予定通り、海外渡航を行い、今年度の残金を来年度に充てる予定である。
|