研究実績の概要 |
本研究は海外のスタートアップ集積中小都市を定性調査、公的統計からの知見なども併せて「中小都市におけるスタートアップ育成・集積モデル」を提示し、地域経済振興の対策を提示することを目指すものである。 本年度もCovid-19の影響により海外のスタートアップ集積都市への訪問調査はできなかったため、大都市におけるスタートアップ集積に関する先行研究調査を進めた。 中小都市においても新規事業者育成の必要性は大都市に劣らず喫緊の課題でありながら、これらに関する研究は非常に少ない一方、大都市におけるスタートアップ育成や集積は、すでに先行研究の蓄積が厚く、実務に資する知見も多いため、訪問調査に先んじてこうした先行研究を整理した。大都市のスタートアップ育成は、起業の成功を支える地域のネットワークの観点から主に論じられてきた。Sexenian(1990)はシリコンバレーで成功した起業家たちは、ポリシーメーカー、アカデミシャン、経営者たちとのインフォーマルな交友関係から起業支援を受けていると指摘した。Bania, Eberts and Fogarty(1993)ではシリコンバレー周辺の大学や研究機関などからの知識流入によって、地域産業が発展している様子が示された。Steenhuis and Bruijn(2010)は、 MIT やスタンフォード大学など高等教育機関からスピンアウトするスタートアップが、直接的のみならず間接的にも地域の経済活動に影響を与えると主張しているなどの研究成果はすでに整理していたが、それにを発展する近年の関連調査を実施し、地域のビジネスエコシステムにまで知見を広げた。 加えて日本国内のスタートアップ集積を目指す福岡、金沢でフィールドワークを実施した。
|